いつかあなたに会えたら
「まどかは、智史についてくの?」
ふいにゼミの同期に聞かれて、私が「え、」と言うと同期は少し眉をひそめた。
「あれ?聞いてない?智史、地元で就職するんでしょ?」
知らなかったことが恥ずかしかった。
そして、それ以上に悲しかった。
智史は普段からあまり自分のことを語らなくて、「こっちで就職するよね?」と聞いた時も曖昧な返事だった。
私は学びたいことがあって上京していて、こっちで就職を決めていた。
もちろん彼もここで就職すると思っていた。
長く付き合っているのに、そんなことも教えてくれないのかと憤った。
その日の夜、智史を呼び出して「なんで教えてくれなかったの?」と問い詰めると、智史は少し悩んでから一言つぶやいた。
「まどかは、こっちで就職したいと思ったから」
『聞いても無駄だと思った』というのが言外に伝わってくる。
でも、それ以上に大事なことがあるとは考えないのか。
「智史といることを選ぶかも知れないじゃない」
「まどかは、俺を選ばないよ。今ですら、かも知れないの話なんだからさ」
智史は諦めたようにふっと笑った。
「……そう、分かった」
それでも、私たちは別れることはなかった。
でも遠距離を始めた頃から、私たちはぎくしゃくしていた。
何を話しても彼は曖昧な言い方をした。
私はそれに苛立つ。
さらに彼は無口になる。
私も言いたいことが言えなくなる。
悪循環でしかなかった。
でも彼が私の気持ちを分からないように、私も彼の気持ちが分からなかったのだと思う。
今ならまだ、彼への気持ちが残っている。
そのうちに別れたい。
憎んだり憎まれたりしたくない。
そして、私たちはよく二人で立ち寄ったカフェで会うことになった。
その帰りの出来事だった。
なんとなく考えた未来がある。
うんと年を取って全ての激しい感情から遠ざかっていたある日、彼が最近亡くなったことを知る。
そして、私は喉が枯れるまで咽び泣く。
一生に一度と信じた大切な恋を思い出して。
だから、まだ永遠の別れには早すぎる。
ふいにゼミの同期に聞かれて、私が「え、」と言うと同期は少し眉をひそめた。
「あれ?聞いてない?智史、地元で就職するんでしょ?」
知らなかったことが恥ずかしかった。
そして、それ以上に悲しかった。
智史は普段からあまり自分のことを語らなくて、「こっちで就職するよね?」と聞いた時も曖昧な返事だった。
私は学びたいことがあって上京していて、こっちで就職を決めていた。
もちろん彼もここで就職すると思っていた。
長く付き合っているのに、そんなことも教えてくれないのかと憤った。
その日の夜、智史を呼び出して「なんで教えてくれなかったの?」と問い詰めると、智史は少し悩んでから一言つぶやいた。
「まどかは、こっちで就職したいと思ったから」
『聞いても無駄だと思った』というのが言外に伝わってくる。
でも、それ以上に大事なことがあるとは考えないのか。
「智史といることを選ぶかも知れないじゃない」
「まどかは、俺を選ばないよ。今ですら、かも知れないの話なんだからさ」
智史は諦めたようにふっと笑った。
「……そう、分かった」
それでも、私たちは別れることはなかった。
でも遠距離を始めた頃から、私たちはぎくしゃくしていた。
何を話しても彼は曖昧な言い方をした。
私はそれに苛立つ。
さらに彼は無口になる。
私も言いたいことが言えなくなる。
悪循環でしかなかった。
でも彼が私の気持ちを分からないように、私も彼の気持ちが分からなかったのだと思う。
今ならまだ、彼への気持ちが残っている。
そのうちに別れたい。
憎んだり憎まれたりしたくない。
そして、私たちはよく二人で立ち寄ったカフェで会うことになった。
その帰りの出来事だった。
なんとなく考えた未来がある。
うんと年を取って全ての激しい感情から遠ざかっていたある日、彼が最近亡くなったことを知る。
そして、私は喉が枯れるまで咽び泣く。
一生に一度と信じた大切な恋を思い出して。
だから、まだ永遠の別れには早すぎる。