いつかあなたに会えたら
「まどか」

気付いたら、私は真っ白なところに立っていた。
その声がどこからするのか分からなかった。
でも、その声が紛れもなく彼の声であることは分かっていた。

「智史!無事なの?どこにいるの?」
「まどか、ごめん」

その謝罪が何を意味しているのか分からなくて、不安が募る。

「悪い夢を見たんだよ。智史と別れ話して、その帰り二人で事故に遭うの。それで、私は大怪我して智史は……死んじゃって。同じ夢繰り返して回避しようとしても智史は絶対に事故に遭っちゃうの」

口にしたら全部嘘になってくれる気がして、わーっと一気に話す。
智史は黙ったままだった。
カフェで話しかけたことは何だったのか。
それを聞けなかったとしても、私は伝えなくてはいけないことがある。

「智史、好きだよ。でも、夢も諦められなくて……一緒にいられなくてごめん」

そう口にすると涙が溢れて止まらなくなる。

「まどか」

彼の声はとても柔らかかった。
すべてを包み込んで、それでいてどこかへ消えていってしまうような声だった。

「俺も、まどかが好きだよ。だから、まどかが夢を諦められないこと分かってた。でも、夢を追いかけてるまどかを好きになったのに、いつからか見てると焦っちゃってた。それに、まどかに選ばれないことが怖かったんだ。だからどんどん嫌な態度をとるようになって……本当にごめん」

不安に襲われて叫びたくなったが、ちゃんと聞かなくてはいけないと悟っていた。

「俺たちが出会ったことだけじゃなくて、一緒に過ごした時間も離れることにしたのもあの日の出来事も、全てが運命なんだよ」

気付くと智史が目の前にいて、私の頬を両手で挟んでいた。
こんなに温かいのに夢であるはずがない。

彼の瞳が揺れている。どこまでも。

「まどかは夢を叶えて。ずっと見守ってるから」

そして、私たちはそっと触れるだけのキスをした。
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