悪役令嬢になりきれませんの。
お茶会の時間
心地よい音色がかすかに聞こえてきて、お茶会にはもってこいの春の足音が聞こえてきそうなほのかに暖かい太陽……そんな昼下がり、王城のバラ園で数人の夫人が集まりお茶会を行っていた……そんな数人の夫人たちの視線はアベスティーナ・マルフィード伯爵夫人の耳元に集められている。
「アベスティーナ様の領土は最近、野菜が有名だと聞きましたわ。みずみずしいとか……甘いとか……色々お聞きしますわ!」
「えぇ。キラキラ輝いており、まるで宝石のようですのよ?子爵夫人も、是非起こしになって、我が領で食べてくださいませ、とても美味しいですわよ?」
「さ、最近……一段とシャルネラ様がお美しくなられたとか……」
「そうですの……あの子もあと少しで学園に入りますし……母親としては心配でなりませんのよ?」
なんて、何とか話を続けようと話を切り出す夫人達にアベスティーナは紅茶に口をつける……他の夫人はもどかしいのか……それとも、耳飾りに魅入っているのか……どこかぎこちない……そんな中、お茶会を開催した王妃がニヤニヤと笑いながらアベスティーナに口を開く
「アベスティーナ伯爵夫人。そう勿体ぶらないでその美しく耳に光る飾りのことを話してくれませんか?皆様が気になって気になって……今にも襲いかかってきそうでしてよ?」
なんてほほ笑む王妃に夫人達が少し恥ずかしそうに顔を伏せる……
「まぁ、そうでしたのね……これはイアリングと言って、今度オープンする予定のお店の試着品なんですの【シャルフィー】と言って、店舗ではイアリングのほかに美味しく美しい見たことの無いデザートが食べれますの。」
「まぁ!!それは素敵でございますね!!どこにオープンされるのですか?」
「さぁ?そこまではまだ、決まっていないの……」
「そうですか……アベスティーナ様、そのお店がオープンされたら教えてくださいましね?絶対ですからね!!」
「ホホホ。そろそろお開きに致しましょうか。」
そう言ってお茶会の幕を閉じさせた王妃はアベスティーナにほほ笑みかける。
「【シャルフィー】ですってね……アベスティーナ。繁盛するとよろしいですね。わたくしも伺わせてもらいますわね?」
「えぇ、喜んでお待ちしておりますわ。」
なんて、長くも短いお茶会の時間が幕を閉じた…………。