悪役令嬢になりきれませんの。
視察(?)に来ただけなのに……2令嬢






はい、馬車で待つこと約30分……いや、時計がないから正確な時間はわかんないから、いつものように適当な腹時計なんだけどね?なんて、退屈すぎて干からびそうになった私にカナルが馬車からおりる……どうやら困った男爵令嬢を対処するらしい……





「ユーレライ男爵様のティアラ様ですね?当店に何か御用でしょうか?」




「っ!?貴方は?」



「申し遅れました。私はマルフィード公爵家に仕えております、執事長のカナルと申します。」




「マルフィード公爵?それがなんだか知らないけど!!この店の人が私を入れてくれないの!!執事なら、何とかしてよ!!何でもしてくれるのが、執事でしょ!!」



「いえ、私はマルフィード公爵家に使えている執事ですので、何もできません。」




「ちっ!役に立たないわね!!」




なんて、聞こえてくる声……お父様とお母様は真顔です。お母様なんて、扇子で口元を隠し目だけが出てるから、元からキツそうに見えるほっそりとした目が余計にキツそう……を、通り越して怖いです……。





おやおや?目で人を殺せそうな冷たい視線を私に向けてくるお母様……そして、口元を隠してた扇子を閉じる……





「アレは、ゴミかしら?シャルネラちゃん。アレは、ブンブンうるさい虫の子かしら?」




「い、いいえお母様……」



「なら、お兄様にお願いして、けしても「アベスティーナ……それはダメだよ。君のお兄さんにお願いしたら、あの子が世間的に消されてしまうからね……」





え、世間的に消される?どういうこ……あ、お母様のお兄様って、この国の宰相でしたね……お母様と伯父様……ライバ伯父様は仲良かったですものね。って言うか……シスコン?……なんと言うか……ゲームの無口で無表情なライバ伯父様のイメージでしか無いけど……ライバ・ララルバさんは、よくできた子が好きで、ゲームでの私は嫌われていたよね……




って、ことは……私……ライバ伯父様に嫌われちゃうの!?まだあったこともないのに!?なんて、学園に入学し、しばらくして学園が開くパーティーで私と王太子殿下の婚約発表をされる……その時に会う叔父様のことを考えていたらカナルがお手上げ状態なのが見える……





「ですから。身分関係なくくつろげるカフェだと言っても、最低限のドレスコードは必要です……」





「何よ、そんなの知らないわよ!!私は男爵令嬢、未来の王妃よ!!」




はて?未来の王妃様?って、よく見れば……このゲームのヒロインちゃんじゃないですか。そうそう、彼女は未来の王妃に選ばれるんだよね!たしか、隣国の女王様の子で生まれたばかりだと言うのに誘拐され、学園で私に、イジメにイジメ抜かれた後、私が婚約破棄される少し前に、誘拐された女王様の子供だって分かるんだよね!……え?ヒロインちゃんがどうしてそれを知ってるの?





「とりあえず、私をこの店に入れなさい!!」





なんて、何度目かの言葉にほっとけばいいモノを体が勝手に動き私は馬車から降りる……馬車から降りると、風がふわりとまい真っ赤なドレスの裾がふわりと足首が見えるぐらいまで舞い上がり、瑠璃色の髪はふわりと風になびく……そんなの自然現象の風の中現れた凛々しい私に周りが息を飲む……ことを願う……




「何事ですか、カナル……ワタクシ待ちくたびれましたわ!」




「っ!シャルネラ・マルフィード……そう、貴女が……貴女がこの執事に平民上がりの私をこの店に入れないように命じたのね!!ここは、身分関係なく出入りできるカフェでしょ!入れなさいよ……私をこの店に入れなさい!!」




そう言って、黒髪にショートボブ。毛先に掛けてゆるくカールし、瞳は淡いピーチ色で整った顔で可愛い……ヒロイン、ティアラ・ユーレライは……なんと言うか……コロコロして愛らし(い?)く……淡いピーチ色の綺麗な(はずの)瞳はほっそりと瞼に隠れてしまっている……ドレスも少し……お腹周りが……その、キツそうで……





「何よ!!ジロジロ見ないでちょうだい!!私は未来の王妃なのよ!!無礼者!!」




未来の王妃……この物語のヒロインには程遠い体型になってしまっている、例えるなら、本来の姿はボンキュッボン……だが、キュボンボン……うん。前世の自分思い出すわ~~なんて遠い目をしてれば、ラルラがまたもやどこからともなく現れる。





「お嬢様が無礼者ですって?それを言うなら、今の貴女はどうなのです。本来なら男爵の貴女が伯爵令嬢のお嬢様と口を聞くなんて無礼ではないですか。」




「うるさい、うるさいうるさい!!私は未来の王妃なの!偉そうな口を聞かないでよ!!」



「……未来のお話ですよね?貴女が言ってる夢物語は。未来への道など常に変わるもの……貴女の王妃様への道は……変わるかもしれませんよ?」




なんて、ニヒルに笑うラルラに私の背筋がゾゾゾと、寒気がしたのだった……







ラルラとヒロインちゃんが睨み合ってる……それをただただ見つめ突っ立っている私。それをジロジロと歩行者又は店内でくつろいでいる人達が見ている……それを良い事にありもしない話を大声で叫ぶヒロインさん。




ハッ!!思い出しました……これはキット【イベント1】ですね!場所が違うから分からなかったわ……そう、イベント1とは……お母様達とお出かけするために馬車で都心にある家から出かけようとした時、曲がり角からヒロインが飛び出てくるイベント……たしか……私はここで彼女を平民風情が!!と怒鳴るはず……それなら、話は早い……





「ラルラ、下がりなさい。男爵と言っても平民上がり……彼女のお父様はユーレライ商会の頭。キットこのお店の味を試すために来たのでしょう。ですから、カナル!ラルラ!彼女にピッタリの特別な衣装を用意して、この店の売れ筋ランキング上位の物をお出しして……」




「え……えぇ。そうよ!ユーレライ男爵令嬢として味見に来て差しあげたの!!美味しいと噂されるこのお店の味をね!!わかったならさっさと出しなさいよ!!」





私は2人に合図する……それに納得してないような感じを醸し出しながら対応する2人はプロだ……。



そんな私たちの会話を馬車の中から聞いていたお母様達が降りてくる……お母様とお父様からは、言いようがない哀れと、怒りの念を感じた……






2階で服装を整えたヒロインを1階のカフェで待っていたら、とある人物が目に入り私はギョッとした……あまり関わりたくないな……ゲームではすごく難しい人だったから……なんて思っていたら、お母様がその人に歩み寄り、可憐にカーテシーをとる。それに続き、お父様、私と続く……そして、この国共通の身分関係なく使える挨拶をする。





「アラマスカルフ。王妃殿下」



女性に挨拶する時は【アラマスカルフ】男性に挨拶する時は【アラマスカルン】なんか、分かりやすそうで言いにくい……なんて、最初は思っていた。




「アラマスカルフ。アベスティーナ伯爵夫人。あぁ……そうね、シャルネラ嬢ももうすぐ学園入学だものね。領土から移ってきたのね?サルマドラ伯爵。お久しぶりね?」




「お久しぶりでございます。王妃殿下……」



そう言って礼をするお父様……王妃殿下の視線は私を貫くように父から私にむく……私は緊張しながらもカーテシーをとる。





「お目にかかり光栄でございます。ワタクシ、サルマドラ・マルフィード伯爵の長女。シャルネラ・マルフィードと申します。この度はこのようなカフェに御足労頂き光栄です。」




「…………」





カーテシーを続ける私を更に鋭く見つめる王妃殿下……私は内心汗だくになりながらも許しが出るまでカーテシーをしていれば王妃殿下に何故か頭を撫でられる……





「さすがパーティーの華と呼ばれるアベスティーナの娘ね……とても可憐で美しいお嬢様だ事……。シャルネラちゃん。私、肩苦しいのは嫌いなの……公の場以外は気をはらなくてもいいわよ?それにしても……私のバカ王太子とは全く違うわね!」



「当たり前です。私たちの子ですもの!」





ホォ……と、ため息を着いた王妃殿下に微笑むお母様……え、お母様!?すっごく仲良しそうに見えるけど……見えるんだけど……目の前にいらっしゃるお方はその……この国の3番目に偉い方だからね!?もう少し、なんて言うか……うん。まぁ、いっか……



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