悪役令嬢になりきれませんの。
あら偶然ですね。という令嬢。
下に降りた私。さすがに王妃殿下わおらずお母様たちだけが優雅にお茶を楽しんでいた。
それからマイホームに帰る道を馬車で走っていたが……お母様がアクセサリーショップに寄りたいと言ったため、寄り道することになったのだが……
店の前には王家の紋章が入った馬車が止まっていた。私はお母様に連れられるままお店に入ったのですが……入った瞬間に漫画でも最近は見かけない。【こっからここまで!】のお買い物をする少年……いや。この国を背負うであろう王太子殿下がいらしゃいました。お母様と挨拶に伺おうと近づいたのですが……お母様が足を止めて扇子を取り出し口元を隠して微笑んでいらっしゃる……ええ、絶対零度の笑みです。
「だぁーかぁーらぁー!!俺が言うことは絶対!!俺は次期国王なんだぞ!!金はあるんだから黙って包めばいいだろ!!全く、これだから庶民は。」
あぁーーーー!!黙ってくださいッ。隣に涼しい顔で微笑んでいる魔王様が怖いのです。私は王太子殿下の口を閉じるため、近ずいて少し声の音量を上げて礼を取る。
「アラマスカルン。王太子殿下」
「あ?誰だお前。それに、アラなんちゃらってなんだ?お前は挨拶もまともに出来ないのか無礼者!!挨拶はな!!【おはようございます】【こんにちは】【さようなら】と、言うんだぞ!!フッ」
意外な言葉を聞いて惘然とした。だって……王太子が使った【この中の言葉】って、日本語ですもん。この世界にはきっと、多分……存在してないと思うんですもん。それに、この国の挨拶のアラマスカルとアラマスカルフを知らないなんて……常識中の常識でしょ!?言葉を覚え始めた子どもは必ずこの言葉から覚えるんですもの……あ、もちろん先に‘ お母様 ’‘ お父様 ’の次だが……。
「あ、あら?王太子殿下はご冗談がお上手ですのね。アラマスカルンとアラマスカルフはご挨拶する時に使うお言葉ですのに……【それは、日本語ですよね?王太子殿下】」
私の言葉に目を見開く王太子殿下。王太子殿下と私のおしゃべりに痺れを切らしたお母様がすっごく素敵な笑みを浮かべたお母様が挨拶する。
「アラマスカルン、王太子殿下。……王太子殿下はお供もつけずにこのお店で何をしていらっしゃるんですの?」
「あ?おぉ!これはこれは、マルフィード伯爵夫人!お供など私には必要ない!!なぜなら汗臭いアイツらが私の周りにいれば男が廃るだろ?俺はこんなにイケてるのに、汗臭さで台無しになる!!それに、アイツらがいたら女がよってこないのだ。俺はこんなにかっこいいのに。あぁ……何故だろう。俺はこんなにかっこいいのに……ぜんっぜんよってこないのだ!!あぁ……そうか、俺がイケメンすぎるのが罪なのか……」
なんて、くだらない……ゴホンゴホン……自画自賛を聞かされ呆れてれば、母がいる方からバキッと聞こえてきて……そちらに目を向ければ……こめかみに怒りマークが見えそうな、とても冷たい素敵な笑みを浮かべ……手には……バキバキにおれた……扇子が握られていた。
「っ!?お、おおおお、王太子殿下ッ!?ぶ、不用心ですよ!?警護の一人や二人つ、連れ歩くべきですわ!!そ、それに……それに……」
こ、言葉がない。いや、言葉はある……言葉はあるんだが……隣のお母様が怖くて言葉が出てこないのだ……
「マルフィード伯爵令嬢。何を言ってるんだ?あぁ、俺が美しすぎて俺と話すのが恐れ多いと言うんだな!!大丈夫だ!俺はイケメンで美しい!!君を優しく包み込んであげよう!!」
そう言って、微笑む王太子殿下……えぇ、えぇ。お顔もお金も地位も……何も問題は無いんですよ。黙ってたら女性達はイチコロでしょう……えぇ。黙っていれば。ですけどね……
「あぁ、マルフィード伯爵令嬢。君と話す時間を取らせよう。是非我が城に来てくれ!」
そう言った王太子殿下に母が口を開く……結構です。と……それを聞いた王太子殿下はピシッと固まった……が、あぁ、大切な娘が私に惚れると思っているんだな!心配ないぞ!なぜなら私は次期国王。後宮ハーレムをつくって~~なんて一人、物語を語る王太子殿下に、お母様は返事することも無く、私の手を掴みお店から出た。
その後、母の機嫌はすこぶる悪かった。