悪役令嬢になりきれませんの。
イベントではないイベント?令嬢






「サーネル様ァ~!シャルネラ様が意地悪してくるぅ~~!!教室に入りたいのに、ドアの前で通せんぼしてるぅ~~」







なんだ、朝からこの茶番……お茶の間が一気にシラケるわ!!なんて、教室に入るために扉を開けようとした私の背後からこの物語のヒロインちゃんが隣にいる王太子に縋り寄りながら騒いでいる。








「シャルネラ嬢!この美しい俺に意地悪をして振り向かそうとしてもそうはいかんぞ!!俺は自分より美しいと思わない奴には目もくれない!!まぁ、俺より美しい者など存在しないがなっ!!」





「きゃ!サーネル様すてきぃ~~!」






「そうだろうとも!!もっと褒め称えよ!!シャルネラ嬢など、俺の頬を叩いてさえ居なければ婚約者などにもならなかったのになぁ!グハハハハ!!」







ザワザワ……
王太子の言葉を聞いてザワザワし始める教室内。聞こえてくるのは……【あのナルシ……王太子に良くやった!!】【さすがマルフィード様ですわ!一生おそばに居たい!!話したことないですけれど。】などなど。私は溜息をつきながらも王太子をみる。







「意地悪などしておりませんわ。私も今来て教室に入ろうとしていたところです。ユーレライ様が仰ってる意味がわかりません。それに、仲良くもないのに名前で呼ばないでくださる?」






「なっ!!酷い!!私は仲良くなってると、友達だと思ってたのに!!酷いわ、シャルネラ」








よく、ポロポロと涙を瞬間的に流せるものだ。なんて思いながらも冷めた目でヒロインちゃんを見ていれば王太子が私に詰め寄ってこようとしている。腕をのばし私の肩をつかもうとした王太子に私はニヤリと笑う








「それに、王太子殿下。私が頬を叩いて婚約者になった。ともうされるなら王太子殿下の頬を叩いたというメイド長も婚約者になられるのでは?この国には一夫多妻制度はありませんよ?」






「なっ!!」








顔を真っ赤に染める王太子殿下。教室からクスクスと笑う声が聞こえてくる。その声に更に怒った王太子殿下。そりゃそうだろ。未来の国王陛下ともあろう者がメイド長に頬を叩かれたと聞かれればメンツが立たない。








「シャルネラ、貴様!!」






ドン!!と、突き飛ばされ私は尻もちを着く前に支えられる。







「アルファーナ、レディーに手を出すとはどういうことだ。」






「ララルバ宰相!?どうしてここに!?」







王太子殿下の言葉を無視して、自分の長男に顔を向ける。







「ハーネル。お前はなぜ令嬢を護らない。それに、各部隊隊長の息子、タラベラルもだ。各部隊をまとめる隊長の息子のお前が令嬢一人守れずにどうする。」





「で、ですが、ララルバ宰相殿!彼女はティアラ嬢を……」






「ふむ。いじめている。とでも言うのか?」








各部隊隊長の息子、タラベラルの言葉頷くハーネル様に目を細める伯父様。教室の温度も私の温度も急激に落下していく。







「根も葉もない噂を確かめずに己で判断し、決めつけるのか。そんなものに誰が命を預けるというのだ。お前はこの国の知識だ。やがて王になる王太子殿下を正しい道に戻してやれず宰相になれるはずもないだろう。」






「……父上こそ、目が霞んでいるのでは無いのですか!!ティアラが、ティアラがここまでシャルネラに怖がっているというのに!シャルネラが自分の妹の娘だからと贔屓にしていらっしゃるのでは!?」







ハーネル殿が言い終える前にかわいた音が廊下に響く。あ、そうだ、ここは廊下だ。それにまだララルバ宰相殿に支えられたままだった。








私はララルバ宰相から離れてれいをとる








「ライバ伯父様。支えて下さりありがとうございました。このあとの話はお互い家に帰ってから。ということで終わりましょう。皆、見ておりますから。」








そう言えばララルバ宰相はため息をついて私に詫びの言葉を言う。それに、とんでもない。と返し微笑めば何故か頭を撫でられる。それから、ララルバ宰相は息子を見てタラベラル殿と王太子殿下をみる。







「このことはご両親に伝えさせていただきます。それでは。」









宰相だというマークのマントを翻しどこかに向かう宰相殿。その場に残された息子達は私を睨みつけていたのだった。






















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