悪役令嬢になりきれませんの。
外に行きたい令嬢




お父さんは何とか思いとどまってくれ……私が謝ったことでお父さん達に泣かれ、微笑んで。と言った私にニコニコ微笑みながら外出禁止令!と言われた。そして、私が謝ったことで、思考が壊れた。とでも思われたのか……何かと怒らせようとする使用人たちやお父様達……呆れながらもそれを怒らず普通に対応した。




怒らせようと仕掛けてくる皆に疲れた私は壊れたのが嘘のように綺麗にあるべきところに戻されたドアを閉めて部屋に閉じこもった。約5分ぐらい……5分以上はお母様とお父様に許して貰えなかった……なんかもうね、ドアの前で可愛い愛娘が見れないからダメ!とか、部屋に閉じこもっていたら可愛いシャルネラちゃんが見れないからお母様たちが死んじゃう!とか……。えぇ、そりゃまぁー。色々と叫んでいましたとも……挙句にはまた、ドアを物理的に開けようとしたので、扉を治してくれる執事見習いの人達に悪いと思い、部屋から出るかわりに外に出たい!!と、15歳にもなってジタバタとドアの前で暴れまくった結果、外出許可を貰えた。きっと、暴れまくらなくても……許可おりたっぽかったけど……




ラルラに急いで出かける用意をしてもらう。化粧をされ髪型を整えられそうになったが、化粧品を持ったメイド長と櫛とリボンを持ったメイド副長の間をラルラの手を握り通り過ぎる。私とラルラを呼び止める声が聞こえるが、無視して外に飛び出す。ラルラが馬車は!?なんて驚いてるのもスルーして、マルフィード領の南側の小川に走っていく。この際、誰にも合わない!引きこもる!!という言葉を撤回して……小川に着いた頃、ラルラの息は上がっていた……





「お、お嬢様……なんで……お急ぎに……それに、伯爵令嬢として……はしたない……です、よ。」



息切れしながらも注意するラルラに謝りながらも、靴を脱ぎ裸足になってドレスの裾を捲り上げ小川に入る。小さな悲鳴とともに怒ろうと口を開くラルラにお構いなく手で水をすくい、ラルラにかける……




「ラルラ……私がなぜ今日オシャレしなかったか、分かる?」




黙るラルラに私は微笑み街の方を見る……
今日、私がここに来たのは。外出許可が出たからということもある。が、第1の目的はそこじゃない。この世界にきて、シャルネラに成り代わり。誰にも会わず引きこもりを極めるつもりだった……けれど、それはお父様達に阻止されて、きっと1年後に学園に行かざるおえない……そうなれば、ヒロインがどの人とのルートにたどり着こうとも、私はヒロインをいじめた。と言う断罪を受け死刑……





できるだけ私は攻略対象者には近づかず、関わらないつもりでいるが……ここは現実でもありゲームでもある……この世界は、ゲーム通りに進むかもしれない……。ならばなんとしても死刑だけは逃れたい。



逃れれることだけを考え、私が家族から追い出されてもこの領地でひっそりと生きていけるだけの、準備を整える。それを目的に家の外に目立たないような格好でここに来たのだ。それを伝えればラルラが私を見る




「お嬢様……いいえ。シャルネラ様……私はどんなことが起きようとも、私はシャルネラ様について行きます。」




「ありがとう。ラルラ……さて!じゃあ、さっそく……何処か人気がなくてひっそりと暮らせる場所を探さなければね!」






なんて、小川から出ようと街の方から視線を外し、ラルラの方に振り返った……そんな私の目に映ったのはラルラの背後にいるボロボロの服を着た私と歳が近そうな少年……わざとらしいボサボサの金髪で肩までのパッツンヘアー。そして、どこか吸い込まれそうな黒に近い赤の瞳。ボロボロの服を着ているが……何処かこの領地で見た農民の少年。と言うより貴族の子息が纏う気品が滲み出ている……




私と一緒で視察に来ているのかもしれないし、彼にも何らかの理由があるのかもしれない。なんて、少年に見入っていた私の頭が動いて正常運転に戻してくれる。




「こんにちは。」




なんて、微笑み小川から出ながら挨拶してみた。そしたら驚くことなく挨拶を返してくれた。




「私はシャルネラ。ここに秘密基地を探しに来たの。貴方は?」



「え、えっと……家の、跡継ぎ争いが嫌で……家出してきた……んだ。」



「そう、色々大変なのね……」





そう苦笑しながら草の上に座る。ラルラがはしたない。と言うが無視して少年を見て隣をポンポンと叩けば戸惑いながらも隣に座る……風と共にフワッと香った上品な香水の匂いに少し胸が踊る。




「僕は……アルベ……。君は、秘密基地を見つけてどうするの?」




名前を名乗ってくれた少年に微笑み穏やかに流れる川に目を移す……それに釣られアルベも川を見る




「私、都心の学園があるでしょ?その学園卒業後にこの国の重鎮達に罰を与えられるの。でね、許して貰えなかったら最悪死んじゃうし。許してもらっても、両親たちに家から追い出されちゃうでしょ?この国の偉い人に嫌われた娘なんて。でも私、この領地が好きだから。家を追い出されてもこの領地から出たくない。だから誰にも知られずひっそりと暮らして、この領地に支援出来たらなぁーって思って!」




そう言って微笑みアルベを見れば、何やら難しい顔をしている。アルベのそんな顔に私は吹き出す。




「なんて顔をしてるのよ!アルベがそんな難しそうな顔をして考えても、どうしようも無いよ?これは夢で見た夢物語だから」




なんて、笑っていればアルベは真剣な表情で私を見つめてくる。そうかと思えばアルベの右の手がそっと私の頬に触れる




「なら、なんで泣きそうな顔をしているの?」




「おかしいな……これでも淑女の端くれなんだけどな、笑えてなかった?」





なんて、困った顔をしながらもそれとなくアルベの手から顔を離す……それを察したのかサッと手を戻すアルベだが。笑ってたけど、目の奥の表情は隠しきれてないよ?と苦笑する。それに、もっとお勉強しなきゃね!なんて笑えば、ちゃんと笑えてる。とお互い微笑む。





「お嬢様、お話中失礼致します。そろそろ帰らなければ旦那様と奥様が心配なされます。」



もうそんな時間?なんて呟きながらもアルベを見る。アルベも少し寂しそうな顔をしているが……私は立ち上がる……




「えっと……アルベ。貴方さえ良ければよ?明日もここで会ってくれないかしら。」




悪役令嬢ぽく言って見れば驚いた顔をしたアルベは微笑み跪く……そうかと思えば私の手をそっと救い手の甲にキスをする……




「喜んで。シャルネラ嬢」





なんて、社交界デビューもしてないのにそれっぽく見つめあい……そしてお互い笑い会う……




「また、明日。」



「えぇ。また明日ね」





そう言ってスルッとアルベの手から手を離す……小川に来た時よりも心做しか足取りが軽く感じた……






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