悪役令嬢になりきれませんの。
夏から冬にかけての令嬢
アベルと会ったのは春が終わりを告げる頃。毎日のように会うようになり、季節は太陽がジリジリと照りつける夏に変わった……
夏間は暑いからと朝方に会う約束をし、今日も会って日が登りきる前に家に帰ってくる……私は自分の部屋でラルラの氷魔法で冷たくしてもらった紅茶で喉を潤わす……
そうそう、この国の人達って魔法が使えるにもかかわらず、氷で何かを冷やしたり、食べたり、飲んだり。しないんだそう……だから、私が冷たい紅茶を飲んでいるのを知ったお母様は毎日のように私の部屋で冷たい紅茶を飲むのが日課になっている。
「お母様……我が領地は夏は暑く作物が育ちにくく、冬は冬で雪が酷く作物がならないとか……」
「えぇ。シャルネラちゃんの言う通り……毎年この時期になったら、困るのよね……」
なんて、ティーカップを机に戻して頬に手を当てて困った顔をする儚げつり目美人……絵になる美人にホゥ……とため息が出るが……それどころではなくなった。なぜ知ってるの?とお母様に聞かれたのだ……アルベに聞いた。と、何故か正直に話したくなく、少しだけ誤魔化した。
「えっと、それは……わ、我が領地の。の、農民の人に聞いたのです!」
「まぁ!それは行けないわ!淑女として、夫を支えるのが女の務めであって夫の留守以外に仕事に関わるのはいけないわよ?シャルネラちゃん……」
「ですがお母様……私はお母様のようにお父様を支えるよき妻でありたいのです……一般的な夫人はそうですわ……ですがお母様!シャルネラは支え、支えられ。と、お仕事もこなせる奥様になりたいのです!!」
「まぁ!素敵よ!シャルネラちゃん!!さすがお父様とお母様の娘!!シャルネラちゃんがそこまで考えて言うのならお母様だって、張り切っちゃいますわよ!カナル、旦那様の書斎からここ数年の報告書と春の月の報告書を持ってきてちょうだい。」
これでもかっ!!ってぐらいに抱きしめられお母様の胸を満喫するため抵抗なくされるがままになる私。そんな私たちの少し離れた場所にいた執事カナルが返事をして部屋から出て行く。
確か……カナルって、お父様の執事じゃ……なんて思いながらもふわふわな膨らみを楽しんでいた……