悪役令嬢になりきれませんの。
ケーキを食べたい令嬢
「ムハハハハ!!今から数時間、我が家の調理場は吾輩が支配する!!皆の者、吾輩が何をしでかしても邪魔をするでないぞ!!」
なんて、悪役令嬢っぽく?魔王っぽく?両手を広げ高らかに声をはりあげて言えば、私の背後に控えていたラルラが呆れたようにため息を着くのが聞こえた……が、気にしない!!私はフォークをさせばカタカタカタという振動が味わえそうな薄い生地が何層にも重ねられ、その生地と生地の間を優しく包み込むようなフンワリ、ホンノリ甘い生クリーム……あぁ、たまらん!!ミルフィーユがくいた……食べたいのです!!
「お、お嬢様……シャルネラお嬢様……危ないです。料理については私にお任せ下さい!!私、料理長が愛と忠誠心と真心を1億倍詰めた美味しい料理を作って差し上げます!!」
「ダメよ!!料理長。ここは、ワタクシ、シャルネラの腕のふるいどころ!!邪魔するのなら料理長でも容赦しませんことよ!!……………………さぁ、料理長。私が言った通りに作りなさい!」
「…………はっ、はい!!お嬢様のおっしゃる通りにつくらせていただきます!!」
偉そうに言っておきながらも、考えたら前世にお菓子作りなんてしたことも、ましてや料理の腕は破滅級の私。高らかと宣言していながらも、料理長に投げつけた私にみんながみんな暖かいめで微笑んでいて、小恥ずかしくなりながらも、料理長に身振り手振りで教え作ってもらう……
料理長の理解力が凄い!!身振り手振り、あんな感じの、こんな感じ、甘いヤツ、辛いやつ、ふわふわで!!という説明を理解してくれ、生地、生クリーム、生地……………と、交互に重ねてもらう……
そして、出来上がったのは、まるでライトアップされたとでも言いそうなテレビとかで見る綺麗なミルフィーユ!!私はラルラにホォークを貰って、地味に感じる振動に目を閉じながら口に運ぶ……
「ほぁ~~~!美味しい、美味しいですわ!料理長!!さすが我が家お抱えの料理長!!天才ですわね!」
「いやぁ~~~!お嬢様の教えが明確で分かりやすかったから、作れただけです。ですが……これはなんと言うデザートですか?これは……デザートの革命と言ってもいいぐらいですよ!さすが奥様と旦那様のお嬢様!!」
「まぁ!料理長ったら!私の説明では理解が追いつかなかったんじゃなくて?あっ!これは、ミルフィーユって言いまして、革命なんて大げさに言うようなものでもないですよ!生クリームとこの薄い生地がたまらなくマッチした甘く美しく、美味しいデザートなのです!!私が一口食べてしまいましたが……皆さんお一口どうですか?」
なんて言った私に、料理長を筆頭にその場にいた皆がどこからともなくホォークを取り出し我先に!とミルフィーユが乗った大皿に近寄り、ホォークを入れる……そして、口に……
ほぁ~~~!なんて、うっとりしながら頬に手を当てるメイドや料理人や執事見習いの人達……そうでしょうそうでしょう……ラルラに聞いた話、この世界?国?はクッキーか、クッキーに生クリームを載せたような感じのデザートしかないのだ……
「こ、これは……天使のような……いや、神だ!!」
「さすがお嬢様……天使っ!!」
「お嬢様バンザーイ!バンザーイ!」
なんて、騒ぎ出す。そんな騒ぎを聞き付けたお母さんとカナルが来て、お母様も食べたぁーい!!って騒ぎ出してしまった……そんな母は料理長に三つ作くらせカナルが二つ、お母さんが一つ。カナルが2つとも部屋から持って出たので、不思議に思いながらもお母様とお話しながらも紅茶を飲みながらキッチンで。お茶会が軽く開かれた……
そしてそのよる。料理長、リシャード・ドルナードは料理長の座を料理副長に譲り我が家から姿を消した。