悪役令嬢になりきれませんの。
豊作一直線の令嬢





ここは、我が領土の農民が多く住んでいる町外れ。場違いなほどのフリフリのドレス。ではなく……農民と変わらない泥だらけのドレスっぽいオシャレなモンペを着て私は畑のど真ん中に仁王立ち。その隣には、メイド服を着て、はしたない、はしたない……と呪文のようにとなえ泣きながらも日に当たらないように日傘を指してくれているラルラ。





そんな私の前には何故領主の娘がここにいて、領主がそんな私を試すような目で農民と一緒に向かい合っているのかっていう疑問を隠すことなく不思議がっている我が領土の住民たち。





「さぁ、始まりましたっ!!今年の夏は寒い冬を越すために豊作にしたいと思います!!さぁ、そのためにもまずは!!我が領土を熱く照りつけるこの太陽!作物も人間と同じで暑い日には適度に水分補給と熱中症対策が必要です。えぇえぇ、知ってますよ!みなさんもご存知、水のやりすぎもよくない!!ですが!そのはんたい、少なすぎも良くないのです!なら、適度に水を……ですがその時間がもったいない……家事に仕事に子供のお世話……魔法で水をやることも出来るが、そんなに魔力を消費したくない……そんなお悩みのそこの貴方!!」




なんて、お父様をバシッ!!と指さす。それに、はしたないです!と、ラルラに注意されるが私はお父様にほほ笑む。えぇ、えぇ!テレビショッピングとか、売り込む営業が得意でもない私は、私なりに頑張って演説する。




「大丈夫!この魔石で太陽の光と不足している水分をまとめて解決しちゃおう!!なんとなんと!!朝の水やりも、日々時間だけを無駄に使う草むしりも、作物がやられる太陽の光も……なんと、ひとつの魔石とこのスイッチだけで解決できちゃうんです!!」





おぉーー!と、私の下手な説明と宣伝に食いついてくるみんなにニヤリと笑う……そう、まるで悪役令嬢っぽく……





「ですが、この便利な道具をタダであなた達に分け与えるなんてことできませんの。それに、この魔石に魔法を約7日に一回注ぐ必要があります。ですが、これがあれば日々の重労働が少しでも無くなる……そんな、私の言葉でお悩みになってるそこのおじさん!!魔石に魔力を注ぐのもこみでこの魔石、金貨5つでどーですか!?なお、壊れた魔石を取り替えるのは別料金で銅板5つです。」



それに、どよめき経つ皆……当たり前である。銅貨とは元の世界で言う、1万円のこと。ちなみに、銀貨が10万、金貨が100万。小銭は小ささの薄い四角いサイコロの形をしたもの……千円は金板、500円は銀板、100円は銅板。主に使われるお金はサイコロの形の方……貴族はともかく、一般人は銅貨なんて、持ってないだろう。





「領主の娘だからといって許される事と許されないことぐらい判断できんのかっ!!領主!!ワシらに死ねというのか!」




「今日明日の生活でもヒーヒー言ってるんだよ!銅貨5つなんて……出せるわけないよ!」




「……そうだぞ……シャルネラ……私も銅貨5つを支払えなんて言えない。せめて金板3つ「いいえ、お父様。これだけは譲れませんわ!!」





私はお父様を睨む。そんな私にみんなが黙り……唾を飲んだ……ような気がした……





「もちろん、今すぐに用意しろ。なんてあくどいこと言いません。冬の収穫までお試し期間として皆さんに無料でお渡します。それ以降は自分たちで買うかどうか決めればいいのです。ですが、これだけは約束致しますっ!!皆さんの時間も、皆さんのお金も……決して無駄には致しませんっ!!冬までに必ず、この魔石のありがたさを知らしめてやりますわッ!!」





なんて、凛とした声で広く伝わるように言えば静まり返るが……しばらくして、あーだこーだと言い始める……娘の教育はどーなってる!!とか、言い始め、お父様が困っているのが見えた……だから私は……





「黙りなさいっ!!ごちゃごちゃ言う前に行動を起こせ愚民ども!!庶民は庶民らしく、ワタクシの言う通りに動いていればいいのです!!さぁ、カナル。その魔石を押し付けなさい。愚民どもに魔石のありがたさを知らしめるのです!!!!」






そう言って見下すように嫌な笑顔でカナルに命令する。カナルは見習い執事と共に魔石を皆の手に置いていく……




「使い方は簡単です。シャルネラお嬢様が仰るには自分の畑の中心部に埋めるだけで自分の畑は豊作の神の庇護に置かれ、太陽の光が必要ない分は遮断され、必要な時に必要な水を与えてくれるという。優れもの……今まで水やりや草むしりに使っていた朝の忙しい時間をのんびり過ごせ、畑仕事が必要なのは種まきの時と収穫の時だけ……シャルネラお嬢様の殺し文句は……騙されたと思ってらくしちゃいましょう。だそうです。さぁ、どうぞ……」





そう言って配るカナル達……渡した後、【盗もうと思うなよ?】と、悪役顔負けの顔で耳元で呟いていたのは見なかったことにした……まぁ、私は……魔石で自動水やりきとビニールハウスをイメージした薄いモヤで紫外線をカットする何か。を作ったのだ……遠隔操作も出来て、ちゃんとカナルが言ってくれたように中心部に置いた。のを前提にすればちゃんと冬を超せる量の作物ができ上がるはず私はオーホホホホホホ!!と高笑いをしながら家まで歩いたのだった……





あ、もちろん……ビニールハウスをイメージした薄いモヤは人の目からは見えないですけどね?










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