同じ日が暮れて、違う星が落ちる
彼が、大学の友人たちとの飲み会に私を呼んでくれたのは三年生の時だった。

男女混合十人くらい、サークルの同期。
その中に一人だけ四年生がいると聞いていた。

『はじめまして』

なんとなくその一言で嫌な気持ちになった。
嫌な言い方をされた訳ではなくて、むしろ爽やかに気持ちよく言われたことが私の心をざわざわとさせた。

『先輩は院に進むの決まってて、俺と同じ研究をしてるんだ。尊敬してる先輩』

そう彼が笑って話したら、彼女は『はいはい。それはいいから、彼女の紹介してよ』と私を気遣うように笑った。

きっと彼はいつもこんなことを言っていて、彼女は笑ってあしらっている。
そんな日常が垣間見えて、彼がその後どんなに私との出会いや些細な惚気話をしても、そこを上書きすることは到底できないように感じた。

夕陽の色の話は出てこなくて、どこ行ったとか何をしたとかありふれた話だけで、他人の陳腐な恋愛話を聞かされている気になった。
彼といた思い出はどの瞬間を切り抜いても、今も間違いなく輝いているのに、何故こうも色褪せて聞こえるのか。

それでも彼女の顔をほんの少し曇らせるくらいには十分な破壊力があるのだなと、笑顔の裏でずっと考えていた。



『さっき解散したのに、会いたくなっちゃった』

電話では明るく話そうと思ったのに、つい声が沈む。

『じゃあ、会おうか』

そう彼が笑ったから、もう終電間際なのに暖かい部屋を飛び出して電車に駆け込んだ。
そして、お互いの中間地点にあるこの駅で彼を待った。

星はたくさん見えているのに、一つも名前は分からなくて、でも、降ってきてほしいと願った。

『そんなに会いたかったの?』

息を切らして駆け寄ってきた彼がそうやって意地悪く笑って抱きついてくるから、『私だけ会いたいみたいに言わないでよ』と笑って抱き締め返した。


あの頃はまだお互い大好きだったと信じていいよね。

なんであの時、私が会いたいと言い出したのか知っていたのかな。
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