先輩と私と美術室



「坂井ー、行こーぜ」



「うん、ちょっと待って」





授業が終わり、放課後。




先生に伝えられたとおり、体育祭の実行委員の集まりがあるようなので3年教室に向かう。



3年生の教室に行くのは何となく緊張する。


「失礼しまーす」と小さな声で後ろの扉から入る。

ほとんどの人は集まってるようで、黒板に席順が書いてあった。

青木くんと並んで座る。


「坂井って、部活入ってねーの?」


先生が来るまで何して時間を潰そうかと考えていたとき。

青木くんが頬杖つきながら、こちらを見てそんな質問をしてきた。


「うん、してない。いい感じの部活がなくて」


まあ、部活に入ると絵を描く時間がなくなるっていうのと、めんどくさいっていうのがあるけど…。


「青木くんはサッカー、中学からやってるの?」


「あー、小4からかなぁ」

「結構サッカー歴長いんだ」



「あれー、坂井ちゃんじゃん!」


話していると、前の席についた人に遮られた。


顔をあげると、この前下駄箱の近くで会った前髪をあげてる先輩だった。


「優斗、声でかい」


青木くんの前に座ったのは柏木先輩。


「こんにちは、美希ちゃん」


「こ、こんにちは」


びっくりして、若干声が上ずりながら挨拶する。


「実行委員になったんだ…?」


「なったっていうか、不本意ながらなっちゃったっていうか」



「くじで決まっちゃった感じかぁ。そっちの子もかな?」


「あ、そうです」



ぽかんとしていた青木くん。

まぁ、そうだよね。
私が学校の人気者と知り合いなんて思いもしないよね…。


さっきから教室内の女子の目が先輩方と青木くんに注目されていて、わたしには痛い視線を感じる。



違うから、居たくてここにいるわけじゃないから、なんて言い訳は通用しないんだろう…。




というか、気になってたことが1つ。


「実行委員って2人とも男子でいいんですか…?」



普通は女子と男子一人ずつだと思ってたんだけど。


柏木先輩と優斗先輩(名字わかんない)は隣の席に座ってるし…。


「あぁ、別にいいらしいよー。おれらのクラスの担任が勝手に瞬とおれに決めやがったの」


「勝手にっていうか優斗がうるさくしてて、隣の席の俺が巻き込まれたんだよ」


はぁ、と呆れ顔で優斗先輩を睨む柏木先輩と口をとがらせてあさっての方向を向く優斗先輩。


でも、柏木先輩が実行委員になったら女子から実行委員やりたい人結構いるだろうな、なんて思う。



何故か少しほっとした。




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