ティラミスとコーヒーゼリー





わたしにとっての青春は、いまから10年前のことだ。



17歳、高校2年の夏は、受験生になってしまう前の追い込みで、勉強なんてほとんどせずに遊んでいた。


プリントシールを撮って、ファストフード店で駄弁って、ときどきカラオケに行って。



プールの監視員のバイトをしていた、クラスの男子を冷やかしに、押しかけることもあった。


金欠が口癖なメンバーだったから、小旅行にすら行くことはなかった。ほとんどのことを近場(定期が使えたので高校の周辺とか)で済ませていた。



そんな中、二度だけ、クラスメイトには内緒で遠出をしたことがある。


一方は、電車で1時間。そこまでの遠出ではなかった。
もう一方は、夜行バスで、10時間。高校生のわたしは、とても大胆で、思い切りがよかったと思う。




さすがにほぼ座ったまま10時間乗ってるのはつらいけれど、新幹線を使うだけの余裕がないわたしには、ただひたすら我慢するしかないという、苦い思い出だ。


それだけの時間をかけて、わたしがしたのは、高校野球の応援をするためだった。





わたしの地元の地区では、高校野球の激戦区、とまではいかないけれど、弱小ばかりの集まりでもない、そんな学校がたくさんあった。



校庭にナイター設備もあって、それなりに練習しているふうなのは、学校に通っているから何度か見てきたし、大会も、トーナメントを勝ち進んでいる情報も、なんとなく聞き入れていた。


先の通り、常勝を謳うほど強くはないし、甲子園出場への切符を賭けた戦いにまで到達するとは、だれが予測できただろう。




片道約1時間、電車に揺られて向かった先の球場には、たくさんの高校球児たちの夢が詰まっていた。


ちなみに、どうしてわたしがクラスメイトに内緒で行ったかというと。



理由はふたつある。




ひとつは、自分が属していたクラスのグループとは、趣味や嗜好がかけ離れていたから。
そして、もうひとつは、とある彼のことを、ほかのだれかに知られるのが、いやだったから。





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