社長の溺愛にとかされて
レモンの酸味が、私の心そのままのようで、
カクテルをじっと眺めていた。

慎也は、過去の事には何も触れず、
優しい声で言ってくれる。

「もう一杯飲む?」

「うん」

そう言うと、慎也は勝手にオーダーする。

「これは?」

「ロブ・ロイ」

「知らないカクテル」

「スコッチウイスキーとスウィートベルモットがベース」

「度数高そう」

「ま、高めかな」

そう言って勧められたお酒を少しづづ飲む。

今夜の事は一生後悔するかも知れない。

そう思いながらも、慎也の手を取る勇気は私にはない、
傷つきたくない、そんな弱い私を、お酒は酔わせてくれた。
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