黒桜蝶〜夜桜に蝶が舞う時、私は恋をする〜
「はぁ…はぁ…っ」
ここまで来たらもう大丈夫…。
まさか逃げるとは思ってなかったのか、すぐには追いかけられなかったみたい。
その油断が命取りにもなるのに。
…さて、倉庫にも着いたし、総長に会いにいくとしますか。
重たい扉をガラッと開けると、それまで賑やかに談笑していただろう声がピタリと止んだ。
青ざめた顔をする者、ヒソヒソと噂をする者。
様々な反応を横目に、総長がいるであろう幹部室に足を向ける。
…これにももう慣れてしまった。
あいつらが流した嘘だらけの噂を信じてしまった仲間たち。
入った当初はみんなが可愛がってくれては、戦い方を教えてくれたり。
私なりに馴染めていると思っていた。
だけどそれは本当に一瞬で崩れてしまったけど。
居場所でもあったはずの場所が、居づらい場所になるのは本当にあっという間だった。