いつかまた会う君へ
そうか。私は今気づいたことがある。
大人が学生時代は大切にしなさい。と、言う理由が。
学生時代は毎回、長い校長先生の話、先生の挨拶なんてめんどくさいものだと思っていたのに、大人になったらそんな感情すら忘れてしまうんだ。
そしてめんどくさいと思っていた時も戻ってくるなんてないんだ。

「っと、」

人ごみの中にいるからぶつかってしまった。
考え事をしてるとつい、そっちにしか頭が回らなくなる。
...私はこれでもお父さんが医者をしていて小さい頃は色々話していた。本も読んでいた。
間違ってるか、合ってるか分からない。だけど、やり直した意味を見つけられるかもしれない。

「あの、もしかして体調悪いですか?呼吸も荒いですし...保健室に行った方がいいと...」

その男の人は一瞬びっくりした顔をした。

「...ちょっと体調が悪くて。保健室まで同行してもらってもいい?」

「分かりました。案内しますね」

「ごめん...寄りかかる...」

症状を見るからに多分貧血だろう。

「全然大丈夫です」

何年か前はこんなこと出来なかった。


保健室まで同行すると式が終わったばっかりだったせいか、先生がいなかった。

「薬とか自分のありますか?」

「...ある」

「水持ってきますね」

貧血は色々な症状がある。軽そうに見えて本人はとても辛い。頭が重たくて吐き気、目眩がする。

「ごめん...ここまで同行してもらって」

「大丈夫ですよ。どうせこの後は何も無いんですから。今は寝ていてください」

「そうさせてもらう...」

「保健室の先生が来るまでは待っていますね。先にカードを書いた方がいいですね」

症状、時間、日付などを書くカードが保健室にはある。同行者や、本人の名前。なんであるのかはよく分からない。

「名前、聞いてもいいですか?」

「...悠木 奏汰|《ゆうき かなた》」

どこかで聞いたことがあるような...。有名人だったっけ...。

「分かりました。書いときますね。」

書き終わったら寝ていた。男の人が貧血なんて珍しい。

「ごめんなさい。来るのが遅くなった。」

保健室の先生が入ってきた。

「あっ、そうだ」

チョコレートがあったはず。気持ち程度だが置き手紙と添えておこう。
こういう時に精神年齢が大人だと便利。

『保健室の先生が来たので先に帰ります。
貧血でしたらチョコレートどうぞ。
佐々木 桜|《ささき さくら》』

外に出ると、桜がまだ咲いていなかった
朝はドタバタしていて気づかなかったけど、北国は入学式と同時に桜はさかない
そして、少しだけまだ寒い
日は暖かそうに見えるのに、実質寒い

「おかえりー学校楽しかった?」

「倒れそうになってる人助けた」

「おぉ!僕は感心しちゃうよ...あっ!そうだ、お父さんがリビングで待ってるよー。ちなみに声は聞こえてないから安心していいよ」

私の家にはお母さんが居ない
早くに病で他界してしまった

「ただいま。お父さん」

「おかえり」

お父さんは普段、家にあまりいない
病院にいる方が多いと言えるくらい
小さい頃は会話があったのに、今は何を話せばいいか分からない...
家族なのにお互いが分からない

「ご飯後で作るね」

このままでいいのか。そんな言葉が頭に過った
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