ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方



あたしはとうとう気がついてしまった。

入江先生の中で蒼井という存在が
“気にかけてやらなきゃいけない存在” なんかではなく
“なくてはならない存在” になっているということを。


そして
蒼井の担任の稲葉先生に対しても
彼女とそして入江先生にも
なんらかの複雑な想いを抱いているということも。


けれども渦中にいるはずの蒼井は
その日の夕方の練習にも姿を現さなかった。

入江先生は美咲に蒼井の様子を聞くことはしなかったけれど、
体育館の出入り口へ目をやることが多かったように思えた。
いつ現れるかわからない蒼井を必死に探しているように。


そんな彼女が練習に現れたのは翌日の朝練だった。




入江先生を見つけ、まっすぐに彼の元に駆け寄った彼女。


「入江先生。昨日はすみませんでした・・何も言わずに部活を休んで。稲葉先生から入江先生が心配されてたって聞いて。」

「何かあったのか?」

「・・・飼っている犬の調子が悪くて。」

「・・・・そうか。」


おそらく事実ではない理由を口にした蒼井を入江先生は問い質そうとはしなかった。
けれども彼は一瞬顔を歪めたのをあたしは見逃せなかった。

それからしばらくして
そんな彼がこの時にみたいな一瞬ではなく、
明らかに顔を歪めた出来事に
あたしは遭遇してしまう。





< 10 / 202 >

この作品をシェア

pagetop