ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
「とりあえず、玄関の鍵、開けてもらえます?このままずっとここというのもなんですから。」
そういえばあたし
駅でおんぶから降ろされた時に決めたんだった
“自分の足で歩けないのなら、このまま自宅まで送ってもらおう
その後、彼とどうなっても、それをありのまま受け入れよう“ って
だから
模範解答とか探している場合じゃない
この先の流れは
あたしが決めるべきじゃないんだ
『・・・・今、鍵渡すから、開けてくれる?』
おんぶされたままあたしはポケットの中の鍵をもう一度ぎゅっと握ってから、それをとうとう八嶋クンに託した
この後、どうしたらいいんだろう?
どうなってしまうんだろう?
「この黒猫のキーホルダー、カワイイですね。」
彼の動向が読めなくてあたふたしていたあたしに
彼は声色ひとつ変えずそう言いながら体を少し屈めて手際よく施錠を開けた
「おじゃまします。」
その声と同時に真っ暗な玄関で履いていた靴をおんぶされたままするっと脱がされ、床にコトンとぶつかったヒールの音が静かな部屋に響き渡る
ルームライトのスイッチの場所を伝える前に点された部屋の灯り
それによって照らされた
ローテーブルに置いたままだった飲みかけのコーヒーカップと
カーテンレールにひっかけられている春物のコート
ここで生活している気配が浮かび上がっていることを
一応気にしているあたしを他所に
八嶋クンは歩を進めた。
そして彼が立ち止まったのは
「ソファーに座りましょう。しゃがみますよ。」
桜色の毛布が雪崩れ落ちそうになっているクリーム色のソファーの前だった。