ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
心の中でこっそりとそう叫んでいたあたしをじっと見つめた入江先生。
「たまには自分のことを優先してやれよな。」
その顔もやっぱり優しさに溢れているように見えたのはきっと
あたしの気のせいだと思いたい
顔だけじゃなくて
言っていることも
やっていることも
優しすぎるよ、入江先生は
あたし、もっと勘違いしちゃう
「・・・高島?」
やっぱり入江先生のことがスキなことを
やめなくてもいいんじゃないかって・・・
『・・・・・・』
「高島?」
『えっと・・・何でしたっけ?』
「とりあえず、固定するぞ。腫れている足、出して。」
『テーピング?』
「そう。病院行くにも、まずは応急処置しておかないとな。安倍先生ほど上手くはないけれど。俺じゃ・・・・嫌か?」
嫌じゃないけど手放しでは喜べない
ありえないぐらい心臓が動いてしまうのが怖いし、
またスキと言ってしまいそうな自分も怖い
あまりにも入江先生の存在が
近くに感じられてしまって
『・・・いえ、何から何まで申し訳ない・・・と思って。』
「何言ってるんだか。」
溜息混じりにそう言いながらテーピングのテープをゆっくりと引き伸ばした入江先生に導かれ、どうやら拒否権がないらしいあたしはベッドに腰掛けたまま捻挫した左足を小さく前に出した。
「強めに巻くぞ、固定しなきゃいけないから。」
『ハイ、お願いします。』
あたしの返事を待ってからテープを巻き始めてくれた入江先生は黙々とその作業を進めていて。
カチコチカチと壁時計の針の音がやけに大きく響いて聴こえるぐらいふたりきりの保健室の中は静か。
自分ではコントロール不可能でとどまることのない胸の鼓動が聴こえてしまいそうなぐらい。
かすかに消毒の匂いがする保健室で
ただ足にテープを巻いてもらっているだけなのに
なんで胸の鼓動がおさまらないんだろう?
「よし、できた。」
テープを手にしたまま笑いかけてくれた入江先生の後輩という存在で
お腹いっぱいにならないのはなんでだろう?
「病院、連れて行こうか?」
なんであたしは
こんなにも入江先生という存在を意識してしまうことを
いつまで経ってもやめられないんだろう?
この調子で入江先生に甘えていたら
いつまで経っても自分の恋のベクトルの向きを
自分で変えることなんてできない
『・・・右足は元気なんで、アクセル踏めますし、大丈夫です。』
「そうか。」
あたしの返事を聞いた入江先生の表情が
少しだけ曇ったような気がした。