ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
それと同時に感じた入江先生があたしから少しだけ離れたような感覚も。
「じゃあ、病院が終わる前に早めに言って来いな。」
『あ~ハイ。』
「今度こそちゃんと行けよ。」
そう言いながら小さく微笑んでくれた入江先生は持っていたテープを戸棚に戻してから、保健室の出入口のほうへ向かった。
さっきここに入ってくる際に生徒達が騒いでいたのが夢だったかと思えてくるぐらい無駄な動きを見せない・・・・いつもの彼に戻ってしまった入江先生
多分、このまま “お疲れ、お先に。” といつものように言ってから
ここから消えてしまうんだろう
もう甘えてちゃいけないと思う一方で
このまま時間が止まって欲しいとかベタなことを考えているのは
『入江先生、あの!!!!』
「ん?やっぱり、歩けなさそうか?」
多分、咄嗟に彼のことを呼び止めたあたしだけ。
『いえ、そうじゃなくて。』
「じゃあ、どうした?」
彼を引きとめようとする自分と
彼に甘えちゃいけない自分
・・・どっちの自分もあたし
八嶋クンに対してだけでなく
入江先生に対する気持ちも中途半端なあたし
『あの・・・ありがとうございました。』
「・・・・・今度は」
『・・・・・・・・』
「・・・彼氏に守ってもらえ。生徒に誤解とかされないように。それじゃあな。」
どうにか思いついた “ありがとう” の言葉に対して
自分がスキという気持ちを諦めきれない相手から返ってきたのは
今、目の前にいる人をスキなままではいられないという現実を
嫌という程思い知らされる当たり前な答だった。
俯いて床をじっと見つめたあたしの耳に滑り込んできたのは
ガラガラッとゆっくりと閉められた保健室のドアの音。
入江先生がもう立ち去ってしまったのかを目で確認しようと顔を上げたけれど、やっぱり彼はもうそこにはいなくて。
あたしの視線の先には
“うがい・手洗いをしましょう!” とかえるの兄妹が呼びかけているポスターが貼り付けられたドアだけ。
『・・・そうだよね。既にフラれてるんだもん、あたし。』
何度も勘違いしかかったけれど
最後の最後できちんと線を引かれた。
もうおれのことをスキになるなっていう線を。
『なのになんで・・・あたしはベクトルの方向を変えられないままなんだろう?』
この時、あたしの目からこぼれた涙の存在を知っているのは
ポスターの中からこっちをじっと見つめるかえるの兄妹だけ。