ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
∫15:見えていなかった想い
【∫15:見えていなかった想い】
ひとりきりになった保健室。
窓から見える空に黄金色に輝く三日月が浮かぶ午後6時過ぎ。
あたしは右手で涙をグイッと拭って立ち上がった。
今度こそ病院に行くために。
『痛いけれど、なんとか大丈夫そう。』
がっちりと白いテープが巻かれた左足首に体重を少しかけても大丈夫だったあたしはひょこひょこと歩き始めた。
入江先生がまだいるであろう職員室は通過。
荷物がある更衣室へ寄ってから駐車場へ向かう。
数学準備室へ向かう時はなんとか歩けていたのに
入江先生に足首の捻挫の存在を知られてから
痛みが強く感じるぐらいあたしは弱っていたみたいだ。
でもそれは足首ではなく心のほう。
『甘えちゃいけない。』
入江先生の手を掴みそうになった自分に発破をかけ、
すっかり暗闇に包まれた学校へ繋がる坂を車で駆け下りた。
とりあえず、今度こそ足首の痛みを何とかするために。
その後、あたしが向かったのは、学校から車で30分ぐらいの距離にある整形外科クリニック。
学校帰りでも寄ることができると運動部の生徒達の間でも
話題に上ることがある病院。
『まだ、診察してもらえますか?』
「ええ、大丈夫ですよ。それでは、こちらの問診表にご記入下さい。」
受付担当の人は受付終了時刻間際に飛び込んだあたしに笑顔で問診表が挟まれたバインダーを渡してくれた。
“いつからその症状がありますか?” との問診事項に
八嶋クンに助けてもらったあの夜のことを想い出してしまった。