ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
信号が青になったのを確認し、車を前に進めるもすぐに赤に変わってしまい、ブレーキを踏んで大きく溜息をつく。
『蒼井から連絡が来るなんて・・・・高島と一緒にいるのか?』
ポツポツと降り出した雨粒が車のフロントガラスを流れ落ち始め、ワイパーを動かした瞬間、ようやく信号が青に変わり右折した。
いつも帰宅する道とは異なる道
俺よりも先に学校を出て、蒼井がいるであろう病院に向かった高島も同じ道を通ったに違いないだろう
高島がここを通った時も今と同じように
いやそれ以上に渋滞していたのだろうか?
痛めた足でアクセルを踏んでいたのだろう
やっぱり無理矢理にでも俺が病院まで連れて行ってやればよかった
でも今更だな・・・
俺は一体、何やっていたんだろう?
高島が他人に気を遣いすぎてしまう人間だって
わかっていたはずなのに・・・・
“目的地周辺です。案内を終了します。”
その音声が聞こえてきた瞬間、照明に照らされた病院の看板が目に入った。
病院の建物らしき隣にある駐車場に車を停め、駆け足で病院の玄関に飛び込んだ。
そこに居たのは、受付職員らしき人のみで
電話をくれた蒼井も
そしてここに来ているであろう高島の姿もなかった。
「こちらに受診されるのは初めてですか?」
キョロキョロしていた俺に受付職員が声をかけてくれた。
『いえ、同僚がこちらに伺っていると蒼井・・・・いや、永橋先生からお電話を頂いたので・・・』
「それでは永橋に連絡取りますので、椅子にお掛けになってお待ち頂けますか?」
『あ~ハイ。すみません。』
手で指し示された椅子に腰掛け、どうやら蒼井に連絡を取ってくれているらしい受付職員が電話で話す様子を眺めていた。
高島はどこにいるのかを気にしながら。
そんな中聴こえてきたピンポーンというエレベータの到着音。
その音が聴こえてきた方へ目をやると
「入江先生?!・・・・どうして?」
そこには松葉杖をついた高島の姿があった。
『どうしてって・・・・』
「約束・・・してたんですか?・・・蒼井と。」
『・・・・・』
松葉杖姿だけでも胸が痛むのに
消えそうな声でそう呟いた彼女と向き合ったこの時、
心に黒い影が射したような気がした。