ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
“高島のことで蒼井に呼ばれたから”と言おうとしていたのに
松葉杖をつきながらこっちへ向かってきた高島から先に予想外のことを言われ、言葉を失った。
いつもはイキイキとした目力のある高島の瞳なのに
この時はその瞳に全くと言っていいほど力が感じられなくて
どう応えていいのかすぐには思いつかなかった。
「・・・・学校近くの整形外科のある病院に行ったんですけど、もう受付時間が終わっていて、ここにきたんですけど・・・・・蒼井がここで働いているなんで、ビックリしました!!!!!ほら、ずっと前、入江先生が市立病院で蒼井が働いていたっておっしゃっていたから・・・・・驚きましたよ・・・・こんなところで再会するなんてって・・・あはは・・・・もう、入江先生、言って下さいよ・・・・蒼井がこの4月からここで働いているって。そうしたら、こんなにもビックリしなかったのに~!!!!!もう、ホントにほんとにその・・・」
気の利かない俺にこんな時まで気を遣ってくれたのか
高島は乾いた笑いを交えながら、少々上擦った声で俺にそう語りかけた。
そして彼女は“お先に失礼します”と言い、受付のほうへ向かってしまった。
『高島・・・・・』
会計を終えたらしい彼女は俺のほうへ振り返る。
「入江先生・・・・蒼井に宜しく伝えて下さい。」
彼女はそう言ってから、
無理矢理こしらえたような笑顔で俺に軽く会釈してから病院玄関のほうへ向かった。
このままだと
俺は蒼井に会いに来たと高島に思われたままだ
確かに蒼井から連絡をもらってここにやって来た
でも、俺が会いに来たのは
怪我の状況が心配な高島なんだ
怪我した足だけじゃない
高島がどんな想いを抱いているのかも心配なんだ
『高島!!!!』
勢いよく彼女の名を呼ぶ俺。
「えっ?」
驚いたような顔で振り向いた高島。
『話があるから、家まで送る。』
「でも、あたし、自分の車が・・・」
『車は明日までここの駐車場に置かせてもらえばいい。』
「それに入江先生、まだ蒼井に会っていなんんじゃ・・・?」
こんな時まで蒼井とか俺に気を遣いやがって
高島にはそろそろわかってもらわないといけない
『俺は・・・キミを迎えに来ただけだから。』
俺の心のベクトルは
もう蒼井のほうに向いてはいないということを・・・