ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
∫16:先輩の命令
【∫16:先輩の命令】
声をかけてくれた蒼井はまだ仕事が残っているとのことで、病院玄関で別れた。
その後のあたしは、医師に足の怪我を診てもらうために診察室へ出向いた。
診察の結果は足首の重度の捻挫。
そのため、しばらくは足を床につかずに歩くようにと松葉杖を利用するように指示された。
人生初めて利用する松葉杖をぎこちなくついて歩く。
『こんな大事|《おおごと》になるなんて、情けないな~。』
診察を終えて会計に向かうためにエレベーターに乗った。
『学校はエレベーター、ないもんね。松葉杖で階段を上り下りする練習しなきゃ・・・』
杖の先にグッと力を込めた瞬間、エレベーターが止まりドアが開く。
一歩足を進め、前を向いた瞬間、病院玄関にいた人の姿にあたしは息を呑んだ。
その人は入江先生。
そしてその姿が目に映った瞬間、頭に思い浮かんだのはついさっき偶然再会した蒼井のこと。
やっぱり自分は入江先生のことがスキ
それを再確認したばかりの状況で
蒼井がいるここに来たことが少なからずショックだった。
『約束・・してたんですか?・・・蒼井と。』
だからつい、口にしてしまった。
彼を責めるつもりなんてないのに
問い質すようなことを。
困ったような表情を浮かべた入江先生を見て思った。
やっぱり踏み込んじゃいけなかった・・・って。
何を話したらいいのかわからないのに
ペラペラと思いつくままに言葉を紡いでしまって。
それに気がついたあたしは
ズルイとわかっていながらも
もうここにはいないほうがいいと思い帰ることにした。