ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方



「高島センセ?」

『あっ、なんだっけ?』

「入江先生の異動の噂、知らなかったんですか?」

『・・・・・今、初めて聞いた。でも、噂なんでしょ?』


ただの噂であって欲しいばかりのあたしは
現実は違うと言って欲しかった。



「古川先生からの情報なので、かなり信憑性が高いかと。」

でも、古川先生の情報通ぶりはあたしもよく知っているから
噂を噂で済ますわけにはいかなかった。


『そうなんだ・・・』


確かに公立高校に従事している教師にとって
人事異動はあって当たり前のこと
だからそれが入江先生に関わってくるかもしれないということを
噂の段階でも受け入れなきゃいけない


でも入江先生がここからいなくなったら、彼の

・・・昼間よりもやや低い声での朝の挨拶が聞こえなくなる?
・・・朝のSHRの前に2年生担任達への“今日、何か連絡事項はありますか?”というお決まりな声かけも?
・・・相変わらずキレイな板書で流れるように授業を進める姿も?それを空き時間に廊下からこっそり覗くあたしの楽しみも?
・・・休み時間に数学の質問を聞きに来る生徒への丁寧な説明も?
・・・昼食で出前のおそばをズズズと美味しそうに頬張る横顔も?
・・・水泳部のキャプテンと休日の練習日程の調整の話を楽しそうにする姿も?


全部ここからなくなってしまうの?

いつかはここからなくなるものと頭ではわかっているけれど
その時が間もなくやってくるかもしれないと想像すると
このまま何もしないでその時を迎えることなんて、

あたしはできない



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