ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
彼の指から伝わる温かさが冷えたあたしの指にじわじわと気持ちよく伝わってくる。
それと共に顔も耳も心の真ん中もじわじわと熱を帯びた。
妄想していたことよりドキドキすることをされ、どう反応していいのかわからないあたしの異変に気がついたのか
彼の指先にこもっていた力が少し緩んだ。
でもあたしの体は正直で
少し緩んだままの彼の指に自分の指を絡めた。
『嫌なんかじゃない・・・あったかいです。』
そう言いながら見上げた彼の横顔は少し照れくさそうだった。
そしてそのまま歩き続けた。
お互いに黙ったままだったけれど
わざわざ気を遣って話さなくても
心地よかった。
きっと手を繋いだままだったからだろう。
そうやって歩いているうちに
お互いに御馴染みである場所に着いた。
『夜桜もいいですね・・・』
そこは
昼もここの前を通ったばかりの浜名南高校の校門前。
「こんなに咲いていると入学式までは花が持たないよな・・・俺はもうここで桜の花が咲いて、散っていくのを見ることはないんだろうな。」
『スキだったんですね、南高。』
「ああ・・・凄くやりがいがあった。文武両道という校訓もあって、生徒は勉強にも部活にも熱心に取り組んでいて、俺達もそれに引っ張られるように必死だったしな。」
『わかります。』
「今の2年生の卒業を見届けたかったんだが・・・ 情けないよな・・・」
2年生の卒業を見届けたかったという彼の言葉から想い出した。
“だから、本当に大切だと想う人を失わないために、僕は自分の中に棲みつづけている“当たり前の状況”を自ら手放そうと思った。だから、僕は・・・・・・この学校から自ら去ることにしました。”
“・・・・・・彼女が傍にいるのが当たり前という状況に甘え続けることをやめて、大切にしたいという自分のベクトルを彼女にちゃんと向けたい・・・そう思ったからです。本当ならば今の2年生の卒業を見届けてからと思っていたのですが、自分の気持ちをもうこれ以上、先延ばしにはしたくなかった。”
・・・・・離任式で彼が言った言葉達を。
それらを耳にした時は
入江先生がそこまで想う相手である彼女が羨ましかった
でも
その彼女が自分だったなんて
正直いまだに信じられない・・・・・
『情けないなんてそんなことないですよ・・・それにまだ信じられないです・・・・入江先生の好きな相手があたしだなんて・・・・・それに・・・・2度あることは3度あるって言うじゃないですか・・・』
「2度って・・・何だ?」