ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
“しぶとい” を “まっすぐにスキになる” というまたもやポジティブで芯のある言葉に換えてくれた彼は、あたしの頭の上にそっと手を伸ばし、散り落ちた際にあたしの髪に引っかかっていたらしい小さな桜の花びらを指で掬いあげ彼の手のひらの上に載せて見せてくれた。
『ハートの形・・・』
「さすが、女性らしい感性だよな。」
そう言いながら入江先生は桜の花びらが載っている手のひらをあたしのほうに差し出した。
それを手に取ってみてみようとした瞬間、
『あっ・・飛んでいっちゃった・・・・』
突然吹いた風のせいで
入江先生の手のひらの上にあった桜の花びらがそこから消えた。
風が吹いて花びらが舞うのは当たり前なことだけど
この学校の校門に咲いている桜の花びらが
今の入江先生を象徴しているみたいで
あたしは本音を漏らさずにはいられなかった。
『寂しいです・・・さっきの桜の花びらみたいに、ここから入江先生がいなくなるなんて・・』
「寂しい、か・・・でも、卒業しないとな。」
『卒業・・・・?』
「ああ・・・高島の、先生役と先輩役・・・どっちも。」
入江先生はあたしにとって
いつまでも
あたしの尊敬する先生であり
あたしが頼りにしている先輩
その人が
あたしの前から消えてなくなりそうで
『まだまだです。あたしなんて全然成長してなんかいなくて。』
あたしは必死にそれを否定した。
そんなあたしに入江先生は目を閉じ首を振って見せた。
「もう充分、成長したよ・・・・俺が自分から卒業したくなるぐらいにな。それに、ちゃんと卒業しないとその立場に囚われすぎて、高島のスキをまっすぐに受け止められないままだから・・不器用すぎて情けないけど。」