ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
「おまたせしました。追加用ホイップです。」
そう言いながらホイップクリームの絞り袋を手渡してきたカフェの店員さん。
「お好きなだけお使い下さいね。」
ニッコリと微笑んだその店員さんはあたしに
伶菜さんという人は入江先生にとってどういう存在なのかを本人に確認するスキを与えてはくれなかった。
ホイップクリームの絞り袋を持ったまま、本人に聞きそびれた ”伶菜さんは何者なのか?” を考えてしまったあたし。
「それ、貸してみろ。やってやるから。」
今日の入江先生はやっぱりどこか違う
どうやらあたしがホイップクリームを絞れないって勘違いしてるらしい
でもこういう彼もやっぱり珍しいから甘えることにした。
「これくらいか?」
『あ~ハイ。それぐらいで。それ、返さなきゃ・・・』
「ここのカフェは、ホイップの袋、返さなくてもいいんだぞ。もう少しかける?」
『あ~ハイ。お願いします。』
今日の入江先生は不思議ちゃんというだけでなく
とことん甘い
その証拠に
無理するなって言ったクセに
その入江先生の手によって
あたしのシフォンケーキの上には
ホイップクリームが芸術的と言っていいぐらい高く盛られている
「やり過ぎた・・・俺も日詠のコト、あ~だこ~だ言えないよな。」
入江先生はそう呟きながら、絞り金から飛び出ていたクリームを長い指で掬い上げ、そっと彼自身の口に含ませた。
「甘い・・けど、美味いな。」
そう苦笑いした入江先生は
やっぱりいつものクールな彼とは別人のようだった。