ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方



もうここから動かないと決めた私は早速シートベルト装着。
それを見た入江先生はまた苦笑いしながらアクセルを踏んだ。

やることがなくなったあたし。
とりあえずキョロキョロしてみた。

ドリンクホルダーに置かれていた飲みかけのエスプレッソ缶コーヒー。
その隣に無造作に突っ込まれていたサングラス。
耳に流れてきた音楽は、曲名はわからなかったが校内放送でよく流れていたビートルズ。
それらのせいで急に車内が密室であることを意識してしまった。

地下にある駐車場から地上へ上がる際に目を細めハンドルを握る入江先生が知らない男の人に見えてしまう始末で。
彼がサングラスを手探りで探しているのもただじっと見ているだけで。

もう何話していいのかもわからなくて。
ナビの画面に視線を移動させるのが精一杯だった。

入江先生も運転に集中しているせいか黙ったままで。
その静けさがますます変な意識をもたらす。

そんな時間が流れているうちに
さっきまで立ち並んでいたビルはどこにもなくなっていて車窓の外は民家が見えてきていて。

明らかに南方面に向かっている車。
海のほうに近づいているような気がした。


「夕日に間に合いそうだな」

『夕日・・・ですか?』

こっちに近づいてきて見えた浜名湖に
もしかして今の時間はやっぱりデートだったのかもと勝手に思った。

しかも夕日を見るなんてロマンティック~♪

入江先生と夕日に向かって移動するなんて
体育祭前日の校庭のライン引きの時ぐらいかもしれない
“数学教師の意地を見せて、きっちり200mのトラックラインをひけ!” と同じく数学教師である教務主任の田口先生の指示で毎年、入江先生とあたしがそれをやってる。

そんな業務ではないのに一緒に夕日に向かって移動しているあたしたち。

こんなことしているとあたしはまた勘違いしそうだ
これはデートなんじゃないかって


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