ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方


突然聞こえてきたほんわかとしたかわいい声。
その主はびしょ濡れ状態だけどなんだか嬉しそうな伶菜さん。
日詠さんもそんな彼女のことを首を傾げながら見てるし。

そんなに嬉しそうな顔されても
あたし蒼井じゃない

真里さんという謎の女性の存在を知ったり
蒼井に間違えられたりと
密かにダブルパンチ

でも、駆け落ちしてまでこれから一緒に歩んで行こうとしているふたりの前で
ガッカリした顔で違うなんて言えない

もう笑うしかない
笑えばなんとかなるっしょ!

アハハ
とりあえず威勢よく笑った。

ブンブンブン
今度は手を振って蒼井じゃないことを明るく否定。

よし
ここまでは完璧!


仕上げは

『綾さんって、蒼井のコトですよね?』

「ああ、そうみたいだな・・」

呆然とする伶菜さんにちゃんと理解してもらえるように
できるだけ平気そうな顔をする
そして、苦笑いしている入江先生を巻き込んでの完全否定だ


「自己紹介遅れまして・・・・私、、入江先生の教え子で、今は同じ高校で数学教師をしています高島 茜って言います。綾さんこと蒼井綾という人物の先輩です。今日は突然、入江先生にコレを見繕うように頼まれて持ってきたんです。アナタにって・・。理由は入江先生に直接お聞き下さい。私もしっかりとは聞いてないので・・・」


あたしはやや早口でそう言いながら
彼女にドレスの入った箱を渡した。


おそらく
ワケがわからないままの彼女は
あたしに促されるがままそれを受け取ってくれて
不思議そうな顔で箱を見つめている。


ホントかわいいな・・・この人
イケメンドクターの日詠さんとお似合いだし
兄妹かもしれないけれど
禁断の恋かもしれないけれど
ついでに駆け落ちかもしれないけれど

どうか今ぐらいは
幸せという気持ちを抱いて欲しい
そう思うの


『ここで開けちゃダメ。すぐそこのトイレで開けて、使って・・・さあ、早く・・・』


だからびしょ濡れの服を脱ぎ捨てて
純白のドレスを身に纏って
日詠さんを驚かせて・・・・
今日というふたりの世界を
想い出深いものにして欲しい


真里さんという謎の女性の存在と入江先生の心の中の蒼井の存在感による
ダブルパンチダメージを受けながらも
お似合いすぎるふたりを応援したいという想いのほうが強くなっていたあたしは伶菜さんの背中を押した。

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