ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
そしてトイレのある方向へ歩いていく彼女を
入江先生と日詠さんとあたしとで黙ったまま見守った。
そして、トイレの中に彼女が消えた後、早速口を開いたのは入江先生だった。
「とうとうだな。」
「ええ・・やっとです。」
「羨ましいよ・・・・長年、想い続けたんだろ?」
「ご存知の通りで。」
照れくさそうな日詠さんに穏やかな語りかける入江先生。
駆け落ちというネガティブな雰囲気なんて
もう感じられなかった。
遠州地方特有のからっ風という冷たい風が吹く中、
ここだけが温かい風が流れているようだった。
「なぁ、日詠・・」
「ん?」
「手・・離すなよ・・・伶菜さんの・・・」
「ええ。もちろん。」
「何があっても・・・って約束しろ。」
「約束します。ようやく捜し出した彼女・・・ですから。」
入江先生と日詠さん。
お互いに真剣な眼差しで交わした男同士の固い約束に泣きそうになった。
こんな人情味溢れる入江先生を見るのも初めてで。
「ありがとう。高島さん。」
お礼を言ってくれた日詠さんの穏やかな笑顔も嬉しくて。
「ありがとな、高島。そろそろ行くか。」
『あの、伶菜さんにご挨拶とかは・・・』
「今から伶菜さんのドレス姿を目にする日詠が、俺らに遠慮して彼女に気の利いたことを言ってやれないといけないから・・・・・俺らは退散したほうがいいだろう。」
やっぱり照れくさそうなままの日詠さんの肩を叩いた入江先生の顔が穏やかだったのも嬉しくて。
『そうですね~。』
あたしもちゃんとニッコリと笑えた。
「じゃ、行こうか。」
『ハイ!』
あたしは日詠さんにさよならの会釈をしてから
先を行く入江先生の後を小走りで追った。