ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
それは放課後。
体育館のところどころ錆びて赤茶けている格子戸の隙間から美咲と覗いていたバレー部の練習。
「入江先生~。次、サーブ練習でいいですか?」
「ああ。」
そこにはあの数学の先生が立っていた。
「見学者ですかね?入ってきてもらいます?」
「そうだな。」
部長さんらしき人に気づかれてしまったあたしたち。
「入っておいでよ~よかったら近くで見て行ってね。」
その部長さんらしき人は滑りが悪く重いはずの格子戸を軽々と開け、美咲とあたしの腕を引っ張って体育館の中に引き釣りこんでしまった。
私の腕を引っ張っている部長さんが連呼しているその名前。
入江先生。
この時、初めてあの数学の先生の名前を知った。
それだけでなく
入江先生が数学の授業で見せるオトナの雰囲気ではなく
ボールを追いかける姿は少年のような表情をこぼすことも。
あたしは多分この時に恋に落ちた。
叶うはずもない教師という存在への恋に。
そしてあたしはその1年後に
嫉妬すらできない自分の無力感を知ることとなる。