ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
つい構え過ぎて、今度は声が裏返ってしまった。
いつもの入江先生なら、“声、変だぞ” って突っ込んでくるのに
今日はその声が聴こえない。
それどころか
普段は他人と深いやりとりをする姿なんて滅多に見ないのに
いつもではあり得ないぐらい真っ直ぐな瞳で
あたしの瞳の奥の覗き込むようにじっと見つめられた。
「数学教師だろ?」
『ええ、まあ。』
じっと見つめられるぐらい入江先生は
あたしのスキという気持ちに真摯に向き合ってくれている
そう思ってたのに
【でも】の後の
数学教師だろ?の意味不明な発言
スキって言って
ありがとう、嬉しいよと言われて
【でも】と切り返されて
数学教師だろ?って
この流れを証明問題に対する解答に置き換えたら
証明終了には至っていないと判断させてもらう
残念だけど、こういう捉え方しかできない
だってあたし、数学教師だから
「だったら、ベクトルの向きがズレるとどうなる?」
『方向が変わって到達点も変わる・・・ですか?』
あたしだけじゃなくて
入江先生も数学教師
ただ、彼があたしに問いかけたのは
あたしが思っていた証明問題じゃなくて
幾何(図形)問題だったけれど・・・
「多分、今のキミはベクトルの向きがズレているだけなんだろう・・・一瞬の迷いで。」
『ズレてるって・・・』
ようやく入江先生があたしに
数学教師だろ?と問い質した理由がわかった気がした
あたしと数学教師である入江先生が口にしたベクトルという言葉
それはあたしの気持ちのことをさしているんだろう
あたしのベクトルの向きがズレている
イコール
入江先生のことがスキだという気持ちは
あたしの気持ちがズレたせいで起きただけ
そういうことを言いたいんだろう・・・・
あたしの一瞬の迷いでズレたベクトル
イコール
一瞬の迷いで生じた入江先生へのスキという気持ち
あたしの本当の気持ちは
入江先生には向いていないと
彼にはそう思われているんだ・・・・