ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
練習後、その扉を開け、職員室に着替えを取りに寄った。
隣のデスクの入江先生の椅子にはジャージがかけられているものの
その姿は見ることができず、ほっとした。
先週土曜日の夜。
あんなことがあって
どう顔を合わせればいいか
まだ自分の中で固まっていなかったから。
1年生の副担任のあたしは
よっぽどのことがない限り、朝のホームルームに出向くことはない。
その時間を利用して、トイレへいくフリをしながら着替えた衣服を駐車場にある自分の車へ持っていくことにした。
2月中旬でもまだ強く吹き付けるからっ風は冷たくて
肩を竦めながら歩いていたあたし。
『来客?』
校門のほうへ近づいてくる
なぜか大きなスーツケースを転がしながら歩いている女性の動向を立ち止まって見ていた。
校門に入り、ゆっくりと辺りを見回すスーツ姿のその女性。
ショートカットで凛とした雰囲気が感じられる
同性のあたしから見ても見惚れてしまうカッコいい女性。
やっぱり来客だと思ったあたしが
用件を聞きにいこうとそちらのほうへ一歩足を向けたその時だった。
「入江さん!」
大きな声を上げた彼女が向いている方に
あたしも目を向けた。
走って近づいてくる入江先生と彼女の距離が縮まっていく。
入江先生のお客さんだったんだと思った瞬間、
「忘れ物。ないと困るでしょ?」
「わざわざ、ありがとう。途中下車してくれたんだ。」
手が届く距離まで近づいたふたり。
そして、彼女から差し出されたのは
入江先生の腕時計らしきものだった。