ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方


たかが忘れた腕時計
腕時計を外す時
それはいろんな時があると思う

暑い日に腕時計のベルト部分に汗をかいた時とか
病院でのレントゲン検査や空港での金属探知機ゲートを通過する時とか
プールへ入る時とか

あと何だろう?
お風呂に入る時や寝るときも

寝るときも・・か・・・

たかが彼女が持ってきた入江先生の忘れ物の腕時計じゃないや
されど忘れた腕時計なんだ・・・


「そう。昨日気が付いたんだけど、浜松に戻られてから外出してたりして入れ違いになったら困るし。ここなら確実に会えるだろうなと思って。驚きました?」

「いや。昨日みたいなことがあったから、ちょっとのことでは驚かないけどね。」

「その件はお疲れ様でした。」

「どう致しまして。」


艶のある短い黒髪
上品なゴールド系でまとめたアイメイク
グロスが反射して輝く唇
控えめながらキレイに見えるネイル
股下の長いスラリ伸びた脚

オトナの女子力がかなり高そうなその女性と入江先生が交わす
親密そうな会話。

それを校舎の柱の影に隠れながらこっそりと聞いてしまった。


「帰国したら、またワインとか付き合ってくれます?」

「じゃあ、今日のお礼にご馳走しましょうか?」

ワインデートの約束までも。


「やった♪ 約束ですよ。それじゃ。」

「ボストンに戻っても、気をつけて。」


穏やかな表情でそう声をかけた入江先生に
その女性が大胆にもハグをした。


「真里さん?!」

「あっ、つい。」

「ここ、日本ですから。しかも学校だし。」

「thanksって言葉だけでよかった~」


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