ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方


「あたしの存在如きにグラついてちゃ、難しいかな~。」

『難しいも何も・・・あたしは入江先生と関係ありませんから。』


挑発心を孕んだ瞳で呟かれた言葉によって
いけないとわかっていながらも嫌悪感を抱いた。

「そ。とんだお邪魔だったかしら。お時間とらせてごめんなさい。それでは、失礼。」

『お気をつけて。』


関係がないと口にしておいて
あなたは誰?なんて訊くのはおかしいと思ったあたし。

入江先生の知り合いで、なぜか蒼井とあたしのことを知っていたこの女性の素性を知ろうとはしなかった。

そして、あたしと彼女は反対方向に歩き始めた。
お互いに呼び止めることはなくて。


『ここは職場。引きずったらいけない。忘れろ。事故に遭ったみたいなものだって思え!』

聞こえてくるスーツケースのキャスター音に気をとられないように自分へそう言い聞かせながら職員室に戻った。
1時間目に授業の予定が入っていた入江先生の姿はやはりそこにはなかった。


その代わりに
あたしのデスク上に置かれていたもの。


それは

『あんこが入っているバージョンもあるんだ。』

名古屋名物ういろうと

《高島へ 土曜日、ありがとう》

という入江先生の直筆で書かれたメッセージ。


なぜか名古屋土産
忘れたいのに忘れさせてくれない土曜日というメッセージ
それでもこれらのおかげで
入江先生と話すきっかけができた

これらがなかったら
隣の席の入江先生にどう声をかけたらいいか
わからなかったから


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