ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
「高島先生は新任からここですか?」
「そうだよ~。もう4年目。」
「出身も浜松ですか?」
「んんにゃ、静岡~。駄菓子屋でおでん食べてスクスク育ったの~。八嶋ちんは~?」
「僕はずっと浜松です。大学は静教大で4年間は静岡に住んでましたけど。」
「静教大なんだ~。一緒だね~♪コレ、食べる?」
大皿に盛り付けられたおかずを小皿に取り分けながら
彼と楽しそうに話す彼女を見て
モヤモヤしているところなんかも
「入江先生?! それ、僕に・・」
『高島。コレ、俺のだよな?』
それをブレーキかけることのないまま
他人の前で表出してしまう自分も
あの頃から変わった自分かもしれない
「いり・・え・・先生・・・?」
皿を持ったまま慌てふためく高島からも
目を離せなくなっている自分も
『俺の好物がいっぱいのってるから。』
「で、でも、から揚げとかエビフライとか、煮豚とか、ピザとか、脂っぽいものばかりですよ?入江先生、確か苦手なんじゃ・・・」
『好物になったから、いい。』
「えっ?!それじゃぁ・・・まあ・・・どう・・ぞ。」
そんな俺の変化に気がついていないのか
高島は不思議そうな表情を浮かべ、手に持っていた皿をゆっくりと俺の前に差し出した。
途中まではよかった。
けれども、口の中の脂っぽさに耐え切れず、
ピザと煮豚がまだ皿に残っていた状態で箸がピタリと止まった。
『ちょっと席、外す。』
「入江先生?!大丈夫ですか?」
心配そうな表情で俺の顔を見つめた高島。
正直、大丈夫じゃない状況。
『・・大丈夫だ、高島。でも、そこ通して。』
「あっ、ハイ。」
強がってみたものの
のんびりとはしていられなかった。
彼女が八嶋のために盛り付けてやった皿を奪い取って食べるという大人気ない馬鹿な真似をした俺の胃は限界だった。