ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
Σ3:不透明な対応の行方
【Σ3:不透明な対応の行方】 *数学教師:入江目線
『学生の頃はこれぐらいの脂っぽさなんか、全然平気だったのにな』
駆け込んだトイレの壁にもたれたままどれくらい経つんだろう?
『何、やってるんだろうな俺は。』
皆がいるところに戻らなければいけないのに
自分から馬鹿な真似をしたせいで
心配そうにしていた高島のところに戻りづらい
そう思っていた時だった。
「入江先生、大丈夫ですか?」
背後から聞こえてきた八嶋の声。
自分勝手に彼に張り合ってこの有様な俺が
今、なんとなく一番顔をつきあわせたくない男。
「高島先生も心配してましたよ。入江先生のコト。」
『・・・』
やっぱり心配させちゃったか
高島のことだ
俺に皿を渡さなければよかったとでも思っているんだろう
早く彼女の元に戻って
大丈夫だと言ってやらなきゃいけない
そう思いながら
やたらと重くなった身体をなんとか壁から起こした。
一歩前に出ようとした時
八嶋に背後から前に回りこまれた。
「僕が受け取るはずだった皿を横取りするなんて・・・わかりやすいですね。」
『・・・』
ニヤリと口角を上げた彼。
脂っぽいものを食べたせいで胃がもたれ、
気分が悪いせいだろうか?
真面目で爽やか青年には似合わないその笑みを浮かべた彼に
違和感を覚えた。
「高島先生はわかってなさそうですけどね。」
なにもかも把握しているようなその口ぶり
八嶋の頭の回転がいいのは
日頃の彼の様子を窺っていれば充分わかる
授業だって筋道をきちんと立てて論理的に進められている
生徒とのやり取りも上手い
新人のわりには手がかからない
俺達の中では好印象な彼
でも、今という時
彼のその頭の良さが
俺を追い詰めるんだろう
「教師の入江先生が元生徒だった高島先生のことを好」
『それ以上言うな。』
予想通り
でも
彼が口にしたこと
それを認めてはならない