ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
なんでこのタイミングで
八嶋クンがそんなことを言い出したのか
あたしにはわからない
数学教師になったのは
高校生の時に受けた入江先生の授業がきっかけで数学の面白さを感じた
それがきっかけだったけれど
入江先生のことがまだスキだというあたしの気持ちがバレている今
そんなことを言ったところで、なんか言い訳するみたいで
『・・・そうかもしれない。でも、あたし、フラれてるから。』
だったら
せめて入江先生が誤解されるようなことにならないよう事実を言う
多分、八嶋クンは
入江先生が生徒だったあたしに気を持たせるような態度を取っていた
そんな風に感じていると思うから
「・・・・」
『それでも、数学はスキ。仕事も楽しい。生徒とのやり取りも大変だけど、いろいろ学ぶこともあるし。』
あたしが数学教師になったきっかけを作ってくれたのは
確かに入江先生絡みだけど
この気持ちがあたしの心の中に今あること
それも事実なんだ
「よかったです。入江先生が生徒に手を出すとか・・・もしそうなら彼に幻滅しちゃいそうでしたから。」
『入江先生は後輩に幻滅されるようなことなんかしない人・・だよ。』
あたしがフラれたのが高校生の時だと思っている八嶋クンに
あたしがフラれたのは、ついこの間なんだという本当のことを言うのをやめた。
入江先生が生徒だった蒼井のことをスキだったかもしれないということも。
八嶋クンという人は
入江先生という人を理想の教師の鏡として見つめている
だから入江先生に対して厳しい目で見ていると思ったから。
「そうですよね。入江先生に限って、そんなことないですよね?」
そう呟いた彼。
やっぱり入江先生のことを信頼しているんだと思った。