ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
その後のあたしと八嶋クンは
入江先生の話題に触れることなく宴会がお開きになるまでずっと
この料理が美味しいだの
部活の練習試合はどこまで遠征したかだの
他愛のない話をしながら食べたり飲んだりしていた。
入江先生はというと
野村先生達とともに最後までワイワイ飲み明かしていたみたい。
その勢いに引っ張られていた彼は宴会がお開きになって間もなく、野村先生に引っ張られるように店の外へ出て行ってしまった。
「高島。会費、足りたか?」
それでも、幹事のお仕事である会計をし終えたあたしに入江先生は会計の確認をしに来てくれた。
会計を無事終えていたこともあり、
彼の体調が戻ったかのほうを密かに気にし続けているあたし。
「もう夜遅いし、送る。」
『入江先生、お車でいらっしゃったんですか?』
「いや、酒、飲んでるから、タクシー。一緒に乗ってけ。」
『せっかくですが、まだ電車ありますから』
「だが・・・」
まだ少しひんやりとする風が頬をさする居酒屋の玄関前。
野村先生達に結構飲まされたのか
少しほろ酔い状態の入江先生のありがたい言葉に遠慮した。
少しでも早く帰宅してゆっくり身体を休めて欲しかったから。
それにあの時のことを想い出したくなかったから。
伶菜さんと日詠さんの幸せな姿を見届けたあの日の帰り道。
入江先生にフラれたあの時を。
「高島先生は僕が送ります。僕も電車で帰るので。」
『じゃあ、途中まで一緒に帰ろっか。』
「そうしましょう!」
だから八嶋クンの誘いに乗ることにした。
「そっか・・・じゃ、頼むな、八嶋。」
「ええ、ちゃんとお送りしますから、安心して下さい。」
笑って八嶋クンに声をかけた入江先生。
さっきはかなり気分が優れなかった彼だけど
もう大丈夫そう
「それじゃ、終電がなくなるといけないので、お先に失礼します。今日はありがとうございました。」
『入江先生、お先です。』
八嶋クンのいつもの爽やかな笑顔につられ
あたしも笑顔で入江先生に挨拶をしてこの場を後にしようとした。
それなのに・・・
「・・・高島。」
あたしの名を呼んだ入江先生の低い声。
居酒屋のLED看板の黄色い光にうっすらと照らされたままじっとあたしを見つめるその顔。
それらは胸がズキズキするような感覚をあたしにもたらした。