ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
それなのに
「・・・宿題。」
入江先生はあたしが投げかけた質問に答えてくれなかった。
いつもなら、あたしの質問にはわかりやすく、的確に答えてくれる入江先生なのに
この時に限ってはいつもの先生らしい返答ではなく
宿題という曖昧な返事。
「おやすみ。」
その曖昧さを彼自身も感じたのか
彼があたしの質問への返答の代わりにあたしにくれたもの。
それは初めて一緒にドライブして伶菜さん達の幸せな姿を見届けた後、
あたしが彼にフラれたあの日の帰り道と同じ、申し訳なさそうな声色のおやすみだけだった。
『おやすみなさい・・・』
あの日と違うのは
あの日は入江先生が車の助手席から立ち去るあたしを見送ってくれたけど
今はあたしが入江先生の背中を見送ったこと。
気のせいかな?
やっぱり今日の入江先生の背中は
いつもより小さく見えて
あたしは無意識のうちに足が一歩前に出ていた。
でも、次の一歩は
「高島先生、帰りましょう。終電なくなりますから。」
あたしの手を強く引く八嶋クンによって遮られてしまった。
立ち止まったままのあたしとは対照的に
どんどん離れていく入江先生。
「高島先生・・・泣いてるんですか?!」
入江先生とあたしの心の距離を象徴しているみたいな目の前の状況のせいなのか
涙が勝手にすうっと頬を伝っていた。