ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
∫13:後輩との距離
【∫13:後輩との距離】
『泣いてなんかない・・よ。』
新人歓迎会終了後。
居酒屋の玄関の前。
多分、八嶋クンには涙が頬を伝っていたのを見られていたのに
それを否定せずにはいられなかった。
『目にゴミが入った・・ってやつかなぁ』
ベタな言い訳。
でも、それしか思いつかなかった。
「時間薬という難しい宿題を与えられてしまったから・・じゃないですか?」
きちんとアイロンがけされた紺色の男物のハンカチを差し出してくれた八嶋クン。
至近距離でついさっきの入江先生とあたしのやりとりを見ていたこの人
どこまで状況を把握しているんだろう?
さっきも
あたしが入江先生のことをスキだろうって
言い出したぐらいだし
あんまり踏み込んで欲しくない
あたしと入江先生の間にある今の微妙な関係に・・・
『ゴミじゃなくて、睫だった。』
だから、あたしは嘘ついて話を逸らした。
それでも八嶋クンは
「・・・一緒に取り組んでみるっていうのは、どうですか?宿題。」
逸らしたはずの話を見逃してはくれなかった。
あたしの心を射抜こうとしているような鋭い瞳をした八嶋クンからは多分、もう逃げ切れない
だったら、彼が今、何を考えているかを自分から知ろうとしなきゃいけない
ややこしいことになる前に・・・
『一緒にってどういうこと?』
「言葉通りです。」