ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
「ほら、大丈夫でしょ?」
『無理してるよね?』
「無理だったら、こんなに軽々歩けませんよ。」
おんぶなんていつ以来だろう?
彼の背中とあたしの胸が密着していて
彼が一歩前へ進む度に
彼の足が地面を踏みしめる振動がそこから伝わってくる
それだけじゃなくて
彼の体温らしき温かさも・・・
今、ドキドキするなって制止されても
絶対無理
八嶋クンの彼女とかに申し訳ないよ
いくら足を挫いたからとはいえ
彼氏が他の女をおんぶしたとか・・・
『ごめん。八嶋クンの彼女とかに申し訳ないよ・・・』
八嶋クンの彼女にこの姿を見られているとは思わなかったけれど
それを言わずにはいられなかった。
「・・・・・・・・」
それなのにあたしの声が聞こえていなかったのか
八嶋クンは何も反応しないまま歩き続けてくれていて。
自動改札で定期ICカードを読み込ませるために軽くしゃがんでくれた時も
ICカード読み取り音がピッ!と鳴っても彼は黙ったままで。
もしかして八嶋クンもこの状況を彼女に申し訳ないと思っているのでは?と勝手に焦り始めたあたしに
「彼女なんて、いませんよ。スキな人はいますけど。」
改札口を出た切符売り場の前で
八嶋クンは立ち止まってようやく返事をしてくれた。
やっぱりスキな人、いるよね?
それなのにこんなことをさせちゃってという申し訳なさ倍増のあたし。
『やっぱりゴメン・・・・そのスキな人に申し訳ないよ・・・・あたしなら、彼氏が自分じゃない女性をおんぶとか・・・ヤキモチやいちゃいそうだし。』
八嶋クンに謝りながら
どうかこの状況がその人に見つかりませんように・・と
心の中で祈ることしかできなかった。
それなのに八嶋クンは
「だったら、申し訳なく思う必要ないですよ。」
『は?』
「だって、今、おんぶしている人がその人だから。」
背中越しにとんでもないことを言った。