ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方


あたしをおんぶしたまま
駅の敷地から出て真っ暗な道を歩き始めた八嶋クンの表情がわからない今
彼がよく口にする冗談にしか思えない

だって八嶋クンだよ?

3つか4つぐらい年下で
しかも、女子生徒からの黄色い声を聴かない日がない彼

他の教科の若い女性教師からも
“同じ数学科なら知ってるでしょ?本人、教えてくれなくて~” って連絡先を聞かれたぐらい

それなのになんで
なんであたしがスキって?


茜ちゃん女子力低いって男子生徒にからかわれて
セクハラ~って言ってやりたいけれど
確かに的を得ているから聞き流しているようなあたしだよ?

朝はギリギリまで寝ていてお弁当とか作れずに
購買で生徒に紛れてもみくちゃになりながらおにぎりをゲットしに行くあたしだよ?

やっぱり
冗談としか思えない



『またまたお得意の冗談?酔っ払っているからかな?』


だからあたしは
八嶋クンからのまさかの言葉に
とぼけた声でそう切り返すしかなかった。

八嶋クンはというと
何も言うことなく再び立ち止まって、
ぴょんと軽くジャンプしながらあたしをおんぶし直した。


『びっくりした~、いきなりジャンプするんだもん。』

「酔っ払ってないですよ、僕。」

『・・・じゃあ、さっきのはただの冗談?』

「それでもないです。」

『じゃあ・・じゃあ・・・・・』


彼のついさっきの衝撃的な発言がまだ信じられなくて
あたしは背負われたまま
彼のその言動は本心ではないことを彼から引き出そうと必死だった。


それなのに


「入江先生が出した宿題・・・・・僕が一緒に手伝いたいんです。」

『・・・宿題?』

「時間薬がどうとかって・・・・高島先生はそんなもの必要ないことを僕が教えてあげます。」


入江先生とあたしの間に飛び交ったはずの時間薬という言葉が八嶋クンの口からも紡がれた。


まさかこうやって八嶋クンがからんでくるなんて思ってもいなかった
しかも時間薬が、必要ないことを教えてあげるって・・・・



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