ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
「来月のインハイ予選ってどこのプールだっけ?グリーンアリーナ?」
「それ女子。男はトビオのほう。」
「あのデカイ飛び込み台、お前一発飛んでみろよ。」
「む~り、むりむり!あっ、入江先生、タオルありがと。」
『それってタオル取れってことか?』
「さすが入江先生。わかるな~男心。」
『知るか。』
そう言いながらも手を伸ばして待っている男子部員達にバスタオルを渡してやった。
「そういえばさ、見ちゃった・・・・昨日の予備校の帰り。」
「何みたのよ~?予備校って夜だよね?」
「そう。平日だもん。でね~」
ベンチの横に置いてあったクーラーボックスの中に入っていたペットボトルを手に取った女子部員達がそれを飲みながら話を始めた。
いつもの休憩時間の光景。
生徒の何気ない話に割り込んだりはせずに適当に聞き流すのは
いつもの俺の習慣。
それなのに
この日に限っては彼女らの声に耳を傾けてしまっていた。
「なによ、早く言いなさいよ!」
「だから~見ちゃったの・・・・電車の中で八嶋先生がドアに手をついて女を囲い込んでいたんだよ~!!!!」
「ウソ~?!相手誰?誰?誰?まさかウチの生徒じゃないよね?」
「そのまさかじゃないけど・・・まさかなんだよ~!!!!!!」
八嶋か・・・・
彼女らからその名前が聴かれるのは珍しいことじゃない
けれども
電車の中で女を囲い込むって
なんか穏やかそうな話じゃないな
電車という公共の場で間違ったことになっていないといいけれど
八嶋に限ってはそんなことないよな・・・
「もう、驚かないでよ。」
「もったいぶるな~」
「もったいぶるって・・・・だってその女、茜ちゃんなんだもん・・・」
「茜ちゃんって・・そのまさかの生徒?」
俺も彼女らの知り合いかと思った
その茜ちゃんが生徒ならば
少々ややこしいことになるかもしれない
・・・先輩教師としてそんなことを心配していたのに
「違うって・・・高島先生だって!!!!! あたしまでドキドキしちゃったってば。」
俺はひとりの女子生徒の発言によって
自分の胸にすうっと灰色の影が差し込んだような感覚を覚えた。