ラヴシークレットスクール ~消し去れない恋心の行方
そんな状態でなんとか頭を働かせた俺。
それはおそらく新人歓迎会の帰りのことだったんだろうということは察した。
「しかも、茜ちゃんと八嶋先生、曳馬駅で一緒に降りたんだよ~」
「夜だし、家まで送って行っただけじゃないの?」
「そうかもしれないけれど、でも終電だったんだよ~乗っていた電車。」
「え~終電って・・・それってそれって・・・帰れないって・・・うそ~!!!!!」
聞いちゃいけなかった
いつものように聞き流さなきゃいけなかった
でも聞き流せなかった
新人歓迎会の後の高島と八嶋が気になって
その後も頭から離れなかったから
それを知っておきたい自分がいるのに
知りたくない自分もいる
高島が絡む事柄で
相反する想いを抱き、自分自身が揺れてしまうからだ
そして
蒼井が高校生だった頃
稲葉先生との不可解な関係を気にしていた時も
似たような自分がいた
心がグラグラ揺れているのに
一歩を踏み込めないまま
傍観者になってしまう
怪我した蒼井に手を差し伸べた稲葉先生とは対照的に
彼女に何もしてやれなかった俺
あれから随分時が経つ今
聞き流せなかった女子部員達の噂話が広がると困るに違いないであろう高島のために
何もしてやれないでいる俺
あの頃から
何も学習できておらず
相変わらず根本的に変わっていない自分に嫌気が差すんだ
「ほら、休憩、終わり!!!!! はいはい、動けよ~」
彼女達の話が聞こえない場所にいた佐々木先生の声かけが
タイミング良く噂話が広がるかもしれない空気を途切れさせてくれた。
でも本当は
しっかりこの耳で聴いていた俺がそれをやらなきゃいけなかったことなのに・・・
そのせいか
なんかモヤモヤする胸の内
動かせない
自分の思うように自分自身の気持ちを・・・
高島と八嶋の間に何があってもおかしくないってわかっているのに
覚悟はしているはずなのに
自分の傍に当たり前にあったおもちゃを友達にもっていかれて
返して欲しいのに言えない
・・・・そんな気分
高島は俺のものでもなんでもないってわかっているのに
そんな気分から抜け出せやしない
『情けないよな・・・』
ただそう呟くだけで、
自分自身の気持ちをコントロールできないままの俺は
そのまま月曜日を迎えてしまった。