お助け部ッ☆
『名前、なんてゆーの?』
「え?」
いきなりそう話しかけられて、ドキッと心臓が跳ねた。
『なーまーえっ!!あたしはキミのこと、知らないもん』
……名前聞かれたの…何年ぶりだろ…
俺は社員5万人を抱える大財閥の会長の孫で、社長の一人息子。
いわゆる、御曹司。
親父が事業を拡大するにつれ、後継者である俺の名前も広まった。
いつの間にか俺は有名人。
でもスゴイのは社長の親父であって、俺じゃない。
それをわかってほしかった。
多分この女も…
名前言ったら態度変えるんだろな……
「望月竜也(モチヅキリュウヤ)だよ」
『望月…望月…聞いたことあるような…ないような…』
顎に人差し指をトントンとあて、頑張って思い出そうとしているみたい。
どんだけニュースに興味ないんだ、この女…
今超出てるんだけど。新聞とか雑誌とかにも出まくってるんだけど。
『あ、もしかしてこれか!?』
女が指差したのは新聞記事。
たまたま談話室においてあったのが、うちの会社で一面を飾っていた。
『望月財閥、ついに海外進出……望月財閥ってあの超有名な!?』
大きくてクリクリした瞳を見開いて、女は驚いていた。
「まぁな。俺のじぃちゃんが会長で、親父が社長なんだ」
ここまで言うと、誰だって大抵媚びてくる。
ろくに俺のこと、知りもしないくせに……
っつーかせっかく俺のこと知らない女いたんだから、偽名でも使って隠し通せばよかったかな?
どうせ財産に目がくらんで俺のことなんか見もしない。
例え俺を見てくれたとしても、それは表面だけ。
顔だけを見て勝手にイメージ作って…中身なんか知ろうともしてくれない。
だから俺は人とあまり深く関わるのがキライだ。
でもなんとなく…この女はキライになりたくなかった。
でも所詮、彼女も人間。
返ってくる言葉は同じだろうと、特に気にすることもなく彼女の反応を待った。