お助け部ッ☆



『名前、なんてゆーの?』

「え?」




いきなりそう話しかけられて、ドキッと心臓が跳ねた。




『なーまーえっ!!あたしはキミのこと、知らないもん』




……名前聞かれたの…何年ぶりだろ…


俺は社員5万人を抱える大財閥の会長の孫で、社長の一人息子。


いわゆる、御曹司。


親父が事業を拡大するにつれ、後継者である俺の名前も広まった。


いつの間にか俺は有名人。


でもスゴイのは社長の親父であって、俺じゃない。


それをわかってほしかった。


多分この女も…


名前言ったら態度変えるんだろな……




「望月竜也(モチヅキリュウヤ)だよ」

『望月…望月…聞いたことあるような…ないような…』




顎に人差し指をトントンとあて、頑張って思い出そうとしているみたい。



どんだけニュースに興味ないんだ、この女…


今超出てるんだけど。新聞とか雑誌とかにも出まくってるんだけど。




『あ、もしかしてこれか!?』




女が指差したのは新聞記事。


たまたま談話室においてあったのが、うちの会社で一面を飾っていた。




『望月財閥、ついに海外進出……望月財閥ってあの超有名な!?』




大きくてクリクリした瞳を見開いて、女は驚いていた。




「まぁな。俺のじぃちゃんが会長で、親父が社長なんだ」




ここまで言うと、誰だって大抵媚びてくる。


ろくに俺のこと、知りもしないくせに……


っつーかせっかく俺のこと知らない女いたんだから、偽名でも使って隠し通せばよかったかな?


どうせ財産に目がくらんで俺のことなんか見もしない。


例え俺を見てくれたとしても、それは表面だけ。


顔だけを見て勝手にイメージ作って…中身なんか知ろうともしてくれない。


だから俺は人とあまり深く関わるのがキライだ。


でもなんとなく…この女はキライになりたくなかった。


でも所詮、彼女も人間。


返ってくる言葉は同じだろうと、特に気にすることもなく彼女の反応を待った。



< 22 / 332 >

この作品をシェア

pagetop