お助け部ッ☆
やってみたら、出来た。それが才能。
プルル…
「ん…?」
ありきたりな着信音が耳元で鳴り響く。
まだ朝の6時。今日は天下の土曜日だってのに。
こんな早起き、予定外だ。
無視し続けていると、ピタリと音がやんだ。
諦めたか。
再び目を閉じると…
プルル…
意外としつこい相手らしい。
「誰だよ」
兄貴が低血圧なのはよく知ってるけど、もしかしたら俺もそうなのかも。
そんなことを考えながら、
「はい」
半ギレの声で電話に出た。
ホント眠いんで早く終わらせてください、といった意味を込めて。
「もしもし恭ちゃん?おはよー♪」
男の声なのに、なんとなく可愛さを含んでいる。こんな声が出せる男を、俺は1人しか知らない。
「…莉央さん?」
「うんっ」
我らが山口組の若頭、莉央さん。可愛い外見とは裏腹に、組内最強の武力と権力を持ってる、俺の憧れの人。
が、しかし。
いくら莉央さんでも、俺の睡眠を邪魔することは許せない。多分、一番俺と兄貴が似てる部分。
「おはようございます」
「ごめんね、起こしちゃったかなー?」
“起こしちゃったかなー?”って。
ごめんねも何も、1回切ったくせにまたかけ直して。起こす気しかなかったくせに。
「起こされましたけど。なんですか?」
「恭ちゃん怖いーっ」
俺はあんたのが怖いよ。
「あのね!ちょっとお願いがあるんだー」
「お願い?」
何故か……ものすっごい嫌な予感がした。
「今から寮まで来てくれない?」
…こんな朝早くから?
「…命令、ですか?」
若頭の命令なら従うけど。莉央さん自身のお願いなら、決める権利は俺に……
「命令じゃないよっ?………………………決定事項。いいから早くね」
は、ないみたいだ。