お助け部ッ☆
「こちらの方で…どうかわが社と契約していただけませんか?」
そう言って、一枚の紙を兄貴の前に提示した。兄貴はそれを手に取ることなく、目線だけ移動させて黙読。
俺は後ろからのぞきこむ。
「うわ…」
契約金と記されたところに書いてある数字の0の数が……
大変なことになった。
兄貴、このチャンス絶対棒に振らないでしょ。俺の女装の写真集化は、もはや決定事項だよ…
「…無理」
…え、今の兄貴の声?無理って言った?
熱でもある?頭打った?0が5個もついてんだよ?桁読み間違えてんの?
俺が信じられずに目をぱちくりさせてると、兄貴は男たちに、ピースした。
「足りない」
足りない!?ピースじゃなくて、20万足りない!?なんつー男だ……
兄貴の態度を見て、男たちはすぐさま提示していた紙に20万追加し、金額を提示し直す。
チラリ、と再び目だけで読んだ。
これ結構な額だよ、兄貴。
契約金だけでここまでもらえる素人、そうそう…いや、絶対いないよ……
「違う」
「「「え?」」」
兄貴の呟きに、男たちと俺が、思わず声をもらした。
「…0が2つ…足りない」
何千万要求してんの!?プロ野球選手じゃないんだから!!
平然とそんな額を請求する兄貴は、コンテストの最中とはうってかわって、ニコリとも笑わない。
それは兄貴本来の姿。つまり、この要求は本気だ。
「帰っちゃった」
つまんなそうに呟く兄貴。
「そりゃそーでしょ。兄貴やりすぎだし」
あの後、スカウトマンたちは、顔面蒼白で帰っていった。絶世の美女が金の亡者だったら、誰だってそうなるだろう。
「いいバイト、見つけたと思ったのに」
「本業にしてる人に失礼きわまりない言葉だね」
改めて、兄貴には誰も敵わないということを思い知らされた気がした。