「好きだよ、まゆり」
「すみませんー」

「!」


後ろを向いていたが、とうとう声をかけられてしまった。

振り向くと、予想通りの人物。

相手は私をみて、目を見開いた。


「え!辰己さん!?」

「いらっしゃいませ……」

「え、ちょ、まじ?なんでこんなとこでバイトしてんのー!やだー!」


彼女が置いたアイスのバーコードを読み取る。


「124円です」

「ねえ!辰己さん、いつからバイトしてんの?

ねえ、ねえ、みんな!辰己さんいるよ!」

「……124円になります」


なるべく気にせずに仕事をしようとするものの、上手く行かない。

はしゃぐ声に他のみんなも集まってきて、私は軽く見せ物のようになってしまう。


「あ!本当だ、辰己さんだ!うけるー」

「あの……124円です」

「久しぶりだね、辰己さん!ねえ、なんでバイトしてるの?放課後ひまになったから?」

「………」

「うちの部やめて、放課後時間できたもんねー」


ああ…

現実なんてマジでクソ。

こんなとき、まゆりに優しくなぐさめてもらいたい。

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